100年に1度の対決│2台のアストンマーティンを比較

Photography: Matthew Howell



DB11に乗り換える。すると、カルチャーショックに近い衝撃を覚えた。まず、インテリアのトーンがまったく違う。DB11では居住性が優先され、スペースがたっぷり確保されている。ヴェルヴェットのような豪華さも、ヴァンキッシュにはそぐわないだろう。ベージュは私の好みとは異なるが、これは簡単に解決できる。アストンはインテリアトリムも、標準、オプション、ビスポークと豊富に揃えているからだ。
 
ドライビングポジションは完璧で、ヴァンキッシュより広々としたパノラマビューが望める。デジタルのメーターパネルからはヴァンキッシュのアナログメーターのような個性は感じられず、一般的な印象を受けるものの、機能は申し分ない。インフォテイメントシステムも使い勝手が大きく向上した。特にカーナビのインターフェイスは格段の進歩だ。メルセデスに感謝すべきだろう。
 
エンジンスタートボタンを押すと、新設計の5.2リッターV12ツインターボエンジンがターボ車らしいシューッという音を伴って勢いよく目覚め、気持ちのよいアイドリングに落ち着く。そのサウンドはこれまでの自然吸気V12に似てはいるが、DB11のそれは蜂蜜をなめるようなもう少し滑らかな音だ。このエンジンは実に力強いパートナーとなり、スロットルペダルを軽く踏むだけで苦もなく走り出し、どこまでもスムーズに加速していく。もっと高い回転域ではさらにトルクが溢れ出すのだが、わずかな回転でいとも軽々と進んでいくのは何とも痛快だ。たった1500rpmで516lb-ftのトルクを発生するからこそなし得る技である。
 
ヴァンキッシュSと同様、DB11にもさまざまな走行モードが用意されているので、まずはひと通り試してみる。どんな性格が隠されているのかを把握するためだが、ヴァンキッシュSでシャシーの鋭いレスポンスを堪能してきた直後だっただけに、DB11のやっていることが読み取りにくいからでもあった。それも不思議ではない。長距離ドライブの苦痛を抑制するために設計されたグランドツアラーだから、わずらわしいフィードバックを極力なくし、頻繁にステアリングを修正しなくて済むようにできているのだ。
 
これが高速道路なら大歓迎なのだが、A169を走っていると、タイヤと路面が接地する場所でなにが起きているのかを、正確に知りたくなる。必要なのは、深呼吸をしてステアリングを握る手を緩め、DB11の動きの流れに身を任せることだ。すると少しずつ、だが確実に反応が読み取れるようになり、自分が与えたインプットの良し悪しを判断できるようになる。

DB11はヴァンキッシュSに比べれば総合的なグリップが小さめで、ロールも大きい。そのためターンインからコーナーの立ち上がりまで、挙動全般が丸みを帯びている。フロントエンドが即座にがっちり食いつくというより、車の前後がうまく分担し合ってスムーズに仕事をこなす感じだ。スロットルペダルを強く踏み込むと、テールが沈み込み、フロントエンドがじりじりと限界に近づいていくのを感じる。対してヴァンキッシュSは、もっとアグレッシブに旋回し、急激にタイヤに力がかかる。そして首の筋肉にも。
 
DB11ははじめ、少しよそよそしさを感じさせたものの、慣れれば優れたバランス感覚とコントロール性を隠し持っていることが解る。よりスポーティなモードを選択すると、インプットへの反応が熱を帯び始め、ヴァンキッシュSでは瞬時に溢れ出した旋回エネルギーに似た味わいを示すようになる。"GT"から"スポーツ"、"スポーツプラス" へとモードを切り換えるたび、まるで照明の明るさを変えたようにアダプティブダンピングやトルクベクタリングの反応が明瞭になり、フィールも強くなっていくのだ。

ただ、そもそも優秀な車だから、ドライビングモードをひと通り試してDB11の仕事ぶりやそのやり方を信頼できるようになると、"スポーツプラス" を選択するより、気分次第で"スポーツ" か"GT" モードを選べば充分だと思うようになった。

編集翻訳:嶋田智之 Transcreation: Tomoyuki SHIMADA  原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Richard Meaden 

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