100年に1度の対決│2台のアストンマーティンを比較

Photography: Matthew Howell



2台をドライブした印象をまとめよう。まず、ヴァンキッシュSは激しい走りをせずにはいられなくなる車だ。リラックスしたソフトな走りも苦手ではないが、本来はあくまでも、袖をまくり上げて脇目もふらずにドライビングにのめり込むイメージである。DB11はやや異なっていて、ヴァンキッシュSの激しさを鎮めて穏やかにしたイメージだ。ただし、秘めた能力とパフォーマンスは計り知れない。事実、トップスピードは200mphでヴァンキッシュSと1mphしか違わず、0-60mph加速もわずか0.4秒差である。数字がDB9から大きく向上したことを物語っているが、それに加えてグランドトゥアラーとしての説得力も増している。より柔軟でしなやかな、乗る者をリラックスさせる完璧なオールラウンダーなのだ。
 


もうお分かりの通り、ヴァンキッシュSとDB11はまったく異なる性格を持っている。だが、両方とも実によくできた車だ。一方を選ぼうとするのが無粋に思えるほどである。私は20 年ほど生粋のスポーツカーとスーパーカーをドライブしてきた人間だから、本能的にはヴァンキッシュS に惹かれる。すぐに肌に合う車、要するに私の好みなのだ。とはいえ、DB11も乗れば乗るほど波長が合うようになってきた。そのテイストは幅広く、なおかつ奥深いので、まだ知るべきことも試したいこともたくさんある。スーパーカーのようにひたすら尖ったような車ではないが、その完成度には感嘆させられるし、強く心惹かれる。最高に魅力的な車なのだ。
 
したがって、DB9と過去のヴァンキッシュではあり得なかったことだが、この2台なら両方をガレージに並べるのも頷ける。そう感じさせるようなところがあるのは、私たちにとってもアストンマーティンにとっても朗報ではないだろうか。なぜなら、明確な個性を持つ車を造るという約束をアストンが果たしている証だからだ。次のヴァンテージの登場までおそらく1年を切り、それにまったく新しいモデルの開発も進んでいる。これから数年間は、アストンマーティンから目が離せなくなりそうだ。

編集翻訳:嶋田智之 Transcreation: Tomoyuki SHIMADA  原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Richard Meaden 

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