2台のロールス・スロイス ドーンで高級車の定義を比較する

Photography: Jamie Lipman



現代のドーンは、1952年型と同じく伝統を継承したラジエターグリルと直線的なシェイプを持ち、旧式というよりは永遠という言葉がふさわしい。現行のファントムが発表されたのは2003年のことで、2009年にはゴーストがそれに続いたのだが、これらは今でも充分にモダンに見える。それは始めから流行を無視したからだ。2013年には、ファントムのプレゼンスとゴーストのツインターボV12パワーを備えた大型2ドアクーペのレイスが追加された。レイスのスタイリングは前述のジャイルズ・テイラーが、1950年代のイタリア製GTにインスパイアされたものだと認めているが一般にはあまり賞賛されなかった。

今回のドーンでは、特にスタイルの要となるフードのデザインを注意深く行い、また世界で最も静かなコンバーチブルを創るという目標をかかげ成功している。そのシェイプには美しさと気品が求められ、低いルーフラインがそれに応えたが、高めのショルダーラインと相まってホットロッドのような凄みが出たことも確かだ。その"ホットロッド感"はドライバーに最低限の後方視界を与える小さいリアウインドウと、ロールス・ロイスらしからぬバブルルーフシェイプで強調されるのだが、我々は今回の撮影ではルーフをまったく上げなかった。オクタン読者なら雨さえ降らなければほぼ確実にオープンドライビングを主張するだろうからだ。

新型ドーンはルーフを上げた状態でのスタイリングも計算され尽くしてはいるが、先行のレイス・クーペに対するオープンモデルとして位置づけられているため、概念的にはドロップヘッドクーペというよりオープン4シーターなのだろう。当然オープン時のフォルムはすばらしい。取材車はこの1952年のオリジナルを反映した色調で、どちらかと言えば地味なサンプルだが、新型ドーンの顧客は現代のロールス・ロイスの大胆なカラーチャートから好みのカラーを選択できる。




実際発表会場にあった一台はビビッドなチャイナブルーで常にカメラの的だった。1952年モデルでドライバーの視線を満たした磨き上げられたウォルナットは新型ドーンにはもう見られない。代わりにあるのはファントム・ドロップヘッドから登場したラグジュアリーボートをモチーフとしたウッドワークだ。

ファントム・ドロップヘッドではフードカバーにチーク材が使われたが、ドーンのそれはさらにモダンで寛いだ雰囲気のカナデル社製ワックスフィニッシュウッドになり、ダッシュ、ドアトリム、フードカバーにコーディネートされる。これらはロールス・ロイスのウッドワークの伝統に従い、車の左右でミラーイメージ、つまり左右対象になっている。
 
現代のロールス・ロイスレンジでただ二つだけのオープントップモデル、ファントム・ドロップヘッドとドーン。ロールス・ロイスがドーンに込めたものは一言で言うなら、周りを引きつける魅力。ドーンはよりスマートでよりセクシー、そしてわずかではあるが小さいが、依然として全長は5メートルを超える。パワーはレイスの624bhpに対してゴーストと同じ563bhpだが、ツインターボV12の威力でとてもきびきび走る。

編集翻訳:小石原耕作 Transcreation: Kosaku KOISHIHARA Words: Mark Dixon 

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