アストンマーティンの変革者 アンディ・パーマーに聞く成功の秘策

Images: Aston Martin



「まずはビジネスの進行状況を説明しましょう。そこから始めるのが一番いい」すぐに本題へと入る、パーマーのオープンで率直な人柄はいつも変わらない。

「ご存知のように、私たちは今、セカンドセンチュリープランを進行中です。現在進めているのは2015年から23年までのプランで、これは3期に分かれていますが、一部は重なり合っています。2017年の第1四半期に終了した第1期の目標は、資金の流出を最小限に食い止め、会社としての存続を確実にすることでした。プランを遂行するための資金を調達し、低金利の融資に更新して経営の健全化を図りました、その結果は直近の収支報告書にも示されているはずです」

「それに続く、セカンドセンチュリープランの第2期は、私たちにとってのメインビジネスとなるプロダクションモデルラインナップの再構築でした。すでにDB11とヴァンテージのニューモデルが完成し、それに続いてヴァンキッシュがデビューします。ニューモデルはトータルで7タイプ。第2期は2016年末から2019年までで、現在はここにあたります」

「第3期のテーマは、ラインアップのさらなる拡大です。新たに4モデル、プレミアムSUVのDBXと、新型のミドシップスポーツ、そしてラゴンダブランドから2タイプのニューモデルが登場します。その中の3モデルの生産をセント・アサンで行うのです」
 
アストンマーティンDBXと、ラゴンダブランドから登場するサルーンとSUVが、実際にセント・アサンの新工場での生産を計画するモデルだ。これらはすべてが同じプラットフォームをベースにしており、きわめて効率的なモデルラインナップの拡充を可能にする。

「たとえばシャネルは、グループ内のひとつのブランドです。私たちはそれよりも、ルイ・ヴィトンやヘネシー、タグホイヤー、プリンセスヨットなどを傘下に収める、世界最大の高級ファッショングループ、LVMHのような存在となることを目指しているのです。私たちはカスタマー層を7つに分けており、したがってすべてのカスタマーに満足していただくためには、最終的にトータルで7モデルが必要になるのです」
 
だが現実的には、7モデルで個性的なプロダクトを求める傾向が強い、アストンマーティンのカスタマーからの、すべてのリクエストをカバーするのは不可能だろう。

「カスタマーからの細かいリクエストに対応し、満足度を高めるためには、スペシャルモデルを積極的に活用します。現在すでにそうであるように、毎年2モデルのスペシャルモデルを発表します。アストンマーティンはこれから、あらゆるスポーツカー、そしてラグジュアリーカーが揃うワンストップショップになろうと考えているのです」
 
そのスペシャルモデルの好例が、ザガート・シューティングブレークだ。2017年のペブルビーチ・コンクールデレガンスで発表されるや、予定の99台が1週間で完売した。
 
セカンドセンチュリープランの進捗状況を説明すると、続いてパーマーは現在の経営状態を示す数字をいくつかあげた。
「過去に最高の売上高を記録したのは2007年で、この年は7200 台を販売して、利益は9200 万ポンドでした。対して2016年は3600台で1億100万ポンドの利益を上げました。つまり、経営効率が2007年の倍になったのです」
 
この数字にも裏づけされているように、表面的にはセカンドセンチュリープランの第2期は順調に進んでいるようだ。だがパーマーは驚くべき言葉をそれに続けた。

「このセカンドセンチュリープランで生み出された、新たな資金の80%を費やして、2台のニューモデルを発表しました」パーマーがすでにコメントしているとおり、アストンマーティン、そしてラゴンダからは、さらに5タイプものニューモデル投入計画があるのだ。それに問題はないのか。

「大丈夫です。セカンドセンチュリープランが確実な効果を発揮していることは、2016年の第4四半期に確認しました。最終的には利益が出ています。4カ月後にはDB11ヴォランテとヴァンテージがさらなる利益を生み出しているでしょう。ヴァンテージは最も生産台数の多いモデルなので、経営の安定には特に重要なモデルになります」

原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA 編集翻訳:山崎元裕 Transcreation: Motohiro YAMAZAKI Words: John Simister 

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