アストンマーティンの変革者 アンディ・パーマーに聞く成功の秘策

Images: Aston Martin



多くのアストンマーティンのカスタマー、そしてスーパースポーツのファンにとって、今後誕生するニューモデルの中でも特に興味をそそられるのは、2020年にデビューが計画されているミドシップスポーツだろう。それはパーマーによれば、現在の488GTBの後継となる、フェラーリの新世代8気筒ミドシップスポーツが直接のライバルになるという。このミドシップカーは独自に設計されたプラットフォームを採用するが、ほかのモデルと共通するアーキテクチャーも一部活用する。

「マット・ベッカーがシャシーダイナミクス部門を率い、一方でマレク・ライヒマンがデザイン部門を率いていれば、両者の中で対立や緊張は常に生じるでしょう。しかし、それは悪いことではないことなのです。それによってうまい妥協案や相乗効果が生まれますから。その結果これまでも、それぞれのカテゴリーの中で最も美しく、かつ最もハンドリングに優れた車を私たちが生み出したことは、市場ではよく知られています。ミドシップカーのサイズはコンパクトです。デザインはヴァルキリーをヒントにしつつ、さらに洗練された形に進化するでしょう、とだけここではお伝えしておくことにします」


 
さらに将来において、最も大きな変化となるのがEVおよびハイブリッドモデルの拡大だ。これは特にセント・アサンで製造されるモデルに関わるテーマだが、ゆくゆくは次世代を担うすべてのモデルがそうなるという。だがアストンマーティンは、あえてV12エンジを自社開発し、それをトップモデルで使い続けている。

「ライバルメーカーはダウンサイジングのテクニカルトレンドを追っていますが、私たちはそれとはまったく違うコンセプトでパワーユニットの進化を進めています。したがって、メーカー全体としてのCO₂排出量を規定内に抑えるために、V12エンジンからのCO₂排出量を相殺するモデルが必要になります。2019年にはラピードのEVバージョンを155台生産し、それがどのようなスタイルで使われているかを、私たちが学ぶためのカスタマーを選びます。このプランはまだ誰も知りません。今後はV12と電動パワートレーンの開発と生産を自社で行い、一方でV8エンジンはメルセデスAMGとの技術提携を最大限に活用します。そして2025年か2026年頃から、各モデルにはハイブリッドのオプションを加えます。これはつまり、次世代のDB11とヴァンテージからということを意味しています」
 
イギリスはすでに、ガソリン車の販売を2040年から禁止すると発表したが、目標を示すのではなく、政治家が枠を設けるやり方にパーマーは批判的な意見を唱える。

「消費者は混乱しています。ディーゼル車の売上は減少していますが、かといって100マイルしか走行できないEVなど誰もほしがりません。テクノロジーの進化は政治家ではなく、やはりエンジニアに任せるべきものなのです」
 
ハイブリッド車のエネルギー効率は50%だが、ほぼ同じ数字を現在のF1エンジンも達成しているとパーマーは指摘した。そしてインタビューはアストンマーティンのF1GP参入へとさらに続いた。

「ミドシップスポーツカーを望むカスタマーは、F1GPに興味を抱き、それを観戦しています。その人たちがフェラーリやマクラーレンではなく、アストンマーティンを買ってくれるでしょうか。そこで、まずその象徴的存在となるモデルを造りました。それがレッドブルレーシングのエイドリアン・ニューウェイによってデザインされた2タイプのヴァルキリーです。そしてF1チームとの関係をさらに深めて、アストンマーティン・レッドブル・レーシングが誕生しました。現在の段階ではスポンサー契約ですが、次なるステップはエンジン供給ということになるでしょう。もちろん純粋なアストンマーティン製エンジンですよ。ヴァルキリーのエンジンも手がけるコスワースとの技術協力はあるかもしれませんが、このプロジェクトにはメルセデスAMGは関係しません。
 
最後にイギリスのEU 離脱についての意見を尋ねると、パーマーは現在のアストンマーティンは80 %を輸出しているため、ポンド安の影響で利益は増えているという。

「ここゲイドンの本社工場は、年間7000台の生産能力を持ちますが、現在は8500台のペースで稼働しています。生産終了を迎えるモデルに加えて、ニューモデルのオーダーが増えているので。生産ラインは常に制限速度をオーバーしているのですよ」
 
かつて、こうしたことを言えたアストンマーティンのリーダーがいただろうか。アンディ・パーマーのリーダーシップで順調に進む、創業から100年以上もの歴史を刻み続けるアストンマーティンの第2世紀に、さらなる成功を導くためのセカンドセンチュリープラン。このプランによってさらに変化していくアストンマーティンが、実に楽しみだ。

原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA 編集翻訳:山崎元裕 Transcreation: Motohiro YAMAZAKI Words: John Simister 

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