蘇った最高のアストンマーティンをサーキットで走らせる!

Photography:Dean Smith

まったく最近のアストン・マーティンときたら、我々レース好きの中高年にとって目が離せない存在になっている。今度はなんとブランニューのDB4 GTを限られた富裕層のために製作するというのだ。どうやら25台だけが一般販売されるようだが、いてもたってもいられない我々は、さっそくプロトタイプに乗せてもらった。

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冷たい金属と柔らかい革の感触が指先に伝わる。いくつもの計器には古めかしい書体の文字が。炭化水素のほのかな香りが鼻孔をくすぐる⋯。これだけでもうメロメロなのに、すこし"後ろめ"に位置するバケットシートに腰掛けたら、もう完全にお手上げだ。こうしてあなたはDB4 GTの虜になる。ステアリングホイール中央のバッジは、まさしくオリジナルDB4 GTそのもの!
 
小さなキーを時計回りに1 段ひねると赤いライトの点灯とともに電気系が目覚め、さらにもう1段ひねると間髪入れずにスターターモーターが金属的なうなりをあげる。だが、それはすぐに直列6気筒エンジンの野太い雄叫びでかき消された。
 
4段のレース用ギアボックスは一般的なHパターンで、リバースは1速の左上。小さなギアレバーをまっすぐに1速に入れてみた。だが、うまく入っていない感触。ニュートラルに戻し、クラッチを1回2回踏み直して再チャレンジ。今度はうまくいった。ドッグギアがうまくかみ合ったときに発するガチャンという音がその証拠だ。



数回空ぶかししたあと、そろそろとクラッチをつなぐと、車は2、3回身もだえしたかと思うと、するするとガレージをあとにしてスネッタートンへと歩みを進めた。 昔ながらのファンなら誰でも知っているこのサーキットはしかし、グッドウッドやシルバーストーンに並ぶような地位を今日得ているとはいえない。だが名門であることは紛れもない事実。1960年、地元のジャック・シアーズが並み居る敵を前に、オリジナルDB4 GTを駆って勝利したのもここだ。

私はそのシーンを目の当たりにした。身を乗り出すように観戦し、興奮で背筋がぞくぞくしたのを昨日のことのように覚えている。正直申し上げると、今回この車でパドックのまわりを2 分ほど運転したのだが、それがなんと長い時間に思えたことか。なぜって、そのあと誰も走っていないこのサーキットを貸し切り状態で走れるのだから。


といっても、走行が許されたのは長いバックストレートと遠くにある橋の部分だけだ。それでも2 速全開は可能だったし、そのまま3速にもアップでき、この車の飛び抜けた性能を堪能することができた。とにかく1190kgの車重に対して350bhpのパワーと350lb-ft(約48.3mkg)のトルクは与えられすぎなのでは? と思ったものだが、にもかかわらず低速から最大トルクを発生する5000rpm あたりまで完全にスムーズに立ち上がっていく。楽しいと同時に驚きすら感じてしまった。ここのサーキットは空間的な広がりがあっていいのだが、乗るほうからするとスピード感が得られなくて、あまり評判のよいものではないのだが、アストンは一般車でいうところのNVH にも優れるため、さらにいっそうスピード感がなかった。だが、活気は充分に感じた。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Henry Catchpole 

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