蘇った最高のアストンマーティンをサーキットで走らせる!

Photography:Dean Smith


 
3速と4速の行き来は文字どおり素早いチェンジが可能で、これまでに2、3 回経験したドッグボックスと比べても、必要なときにシンクロが得られるなど素晴らしさに満ちていた。ゆっくり走っているときでも不安なく扱える種類のものである。ただ、右の列にシフトするときはコツが必要だ。手に力を込めずに最小限の力で泳がすように動かす。するとレバーはゲート付近で自らが進むべき道を探るのである。これが最良の方法で、やり方を間違えると動きがぎくしゃくするだけでなく、ゲートに入ることを拒み、不快な音まで誘発してしまう。
 
2速から3速、3速から4速、それに4速から3速へのシフトはどれも素早く操作できる。正確だし感触も文句ない。しかし3速から2 速へのダウンシフトはすこし勇気がいる。ブレーキング中でもブリッピングができるように、ブレーキペダルとスロットルペダルはヒール&トゥに適した配置になっているのだが、アシストを持たないブレーキはかなり硬く、列をまたぐダウンシフトは叩き込むようにしないとゲートに入れづらいからだ。こうしたお約束ごとは現代の車ではとんとお目にかかれない面倒な作業かもしれないが、うまく成し遂げたときの満足感は計り知れないものがある。
 
ギアボックスはまだ下ろしたての状態だったから、使い込めばまた違った面を出してくれるはずだが、ハンドリングは完璧でほとんどニュートラル。優れたハンドリングは2、3周しただけでも充分に確信がもてたが、車に慣れてきてからリセスという高速のライトハンダーに挑戦して、さらにその感を強くした。ここで私はノーズを大きめに振ってスライドを誘発したが、スロットル操作ひとつでその姿勢を維持することもできるし、どこからでもラインの修正が利くためコーナー出口の縁石に向けて加速するのも思うがままだった。



たぶんオリジナルに比べてもっとも大きく変えられた部分が、サスペンションのローズ・ジョイントだろう。ここをチューニングすることで、ドライバーは路面情報を掴みやすくなるのである。タイヤがそっくり路面の情報を伝えてくれればベストなのだが、この車が履いているダンロップLセクションは現代のタイヤより変形量がきわめて大きい。しかしドライバーはタイヤと路面がどういう状況にあるか知りたいわけだから、タイヤの変形が大きくては困る。そこでボール・ジョイントを使うことによって少しでもダイレクトに路面情報を得ようというわけだ。標準仕様よりわずかに径の小さい15インチのステアリングホイールが、精密なコントロールに寄与していたこともたしかだろう。


編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Henry Catchpole 

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