蘇った最高のアストンマーティンをサーキットで走らせる!

Photography:Dean Smith



帰路の高速道では、サーキットでは感じ得なかった一面も垣間見ることができたのでご報告しておこう。ヘルメットを被っていては聞こえなかった音の存在である。それは金属がぶつかるときに発するガチャンという音と、すすり泣くようなヒューという音が不協和音のようになって耳を襲うのである。また、ジャンクションで別方向に行くときに初めてウィンカーに触れたのだが、その操作がデリケートなことにも驚かされた。力のいるギアレバーとなんと対照的なことか。この2 本のレバーはどちらもスラリとしているのだが、左手で操作する1本と右手で扱う1本には違った神経を遣わないといけないというのは、けっこう難儀であった。
 
DB4 GTは今日の標準からしても路面情報をよく伝えてくれる車である。丸々と太ったタイヤは洗練さに欠けたサスペンションを補って余りある。バンプの突き上げはけっこう強いが、その角は尖ったものではなく丸められたもの。そのあたりが一般道を走って得た印象だ。といっても、我々は一般道をたくさん走ったわけではない。だが、25人のオーナーがこの車で公道を走りたいと思ったとしても、さほど長い距離でなければ充分楽しめることはたしか。とくにサーキットを走ってそのまま帰宅するといった使い方にはいいだろう。
 
DB4 GTをサーキットで走らせるのはとても至福なひとときである。いつまでもドライブしていたい車であった。だからキーを返すときは本当に後ろ髪を引かれた。冷静に見ればたしかに欠点はある。操作の面では普通なら考えられない気遣いも必要だ。だが待って欲しい。このような車を手に入れたとして、メカニズムとのやりとりが皆無だったら、こんなに夢中になれるわけがない。

独特の操作方法を習熟し、機械と対話できるようになるには多くの時間が必要だし、学ぶプロセスは楽しい時間。そう思えるようにならなければ、このての車といい関係を築いていくことはむずかしいのだ。
 
私は幸運にも現代のサーキット専用車に何台も乗ることができたが、それらはどれも衝撃的なほどスリリングだった。そしていずれも心躍らされたが、その中でどれか一台を選べといわれたら、迷わずこのDB4 GTを選ぶ。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Henry Catchpole 

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事