様々なストーリーを持つ変わった色のジャガー XK120

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変わったボディカラーのXK120だが、その裏にはストーリーがある。2座のオープンボディを架装したシャシーナンバー661161は、右ハンドルのSE 仕様でアメリカ向けに製造され、ボディは下塗りのままで、ボンネットもアルミニウムが剥き出しの状態で納車された。SE 仕様は高出力で、硬めのサスペンションとワイヤーホイール、異なる排気システムを擁し、競技車両のベースに最適なパッケージだった。
 
最初のオーナー、ジェリー・ハーデスティーの購入目的もレースだった。ボンネットはアルミニウムのままで、ボディを白と赤でペイントすると、1954 年末にスポーツカークラブ・オブ・アメリカ(SCCA)のレースに出走。カンザスシティーのフェアファックス空港サーキットで3位フィニッシュを果たし、XK120 のポテンシャルを証明した。ハーデスティーはその後も2シーズンにわたってSCCAのレースにフル参戦。2年目の1956年には、フェラーリ212 やポルシェ550スパイダー、ジャガーCタイプといった強敵や4台のXK120を倒して総合チャンピオンに輝いた。
 
一方、ハーデスティーの妻はXK120を地元の様々なコンクールに出品。何度も賞を獲得し、アルミニウムが剥き出しのボンネットが特に面白い特徴として取り上げられた。やがてハーデスティーはEタイプに乗り換え、XK120 はイリノイ州エドワーズヴィルのコレクターに売却された。近年はアメリカの著名なジャガー・コレクター、マイケル・マラーが所有していた。
 


現在はイギリスに帰郷し、ダンカンハミルトンで販売されている。塗装はオリジナルのままで、大々的に手を入れる必要はあるものの、パーツがすべて揃ったオリジナルコンディションである。
 
レースヒストリーについても徹底的な調査が済んでおり、様々なイベントの写真や概要が付属する。最初のオーナーの息子、ブレット・ハーデスティーも当時の写真や思い出話を提供している。もっと一般的な塗色で新品以上のコンディションにレストアすることも可能だが、この車なら、ヒストリーに敬意を表した控えめなレストアを選んでも素晴らしい結果が得られるだろう。オリジナルのキャラクターや初期のレースキャリアを生かす価値は間違いなくある。適切に行えば、ミッレミリアやル・マン・クラシック、グッドウッドなどのヒストリックイベントに出走できるはずだ。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA

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