「フリーダム! 」を歌い上げたジュネーヴショー│シトロエンの100周年

Photography:Hirohiko MOCHIZUKI , PEUGEOT CITROËN JAPON

2019年のジュネーヴショー、シトロエンブースはパフォーマンスとムービーによるプレゼンテーションが行われた。「目指すのは自由」を謳い、100周年へのオマージュと共に、最新EVコンセプトもお披露目された。

ファッションと美食以外にも、個人主義、合理主義、芸術好き、議論好きなどいろいろな「らしさ」を連想できるフランス。そこに付け加えたいのが「退屈嫌い」だ。ルノーが"退屈へのレジスタンス"というキャッチフレーズを使っているのはご存じの通り。退屈な離陸前機内安全ビデオですら、エールフランスのそれは思わず見入ってしまう洒落たミュージカル仕立てになっている。人生を楽しむことをなにより大切にしている彼らにとって、退屈は忌み嫌うべき最大の敵なのだろう。


 
退屈といえば、われわれ自動車メディアにとってモーターショーの記者発表は退屈なことが多い。決算発表会ではないのだから、本当は数字に表れない意思や勢いや方向性を知りたいのに、経営トップが出てきて販売台数や利益が何%上がったとか棒読みするメーカーが意外に多いのだ。
 
その点、2019年3月に行われたジュネーヴモーターショーでのシトロエンのプレゼンテーションは最高だった。プロのダンサーが登場し、大型スクリーンの映像に合わせ華麗なステップを踏みながらまずは業績と現行ラインナップを紹介。次のパートはショートムービーだ。トラクシオンアヴァン、2CV、DS、GS、CX、XMといった過去の名車や、セバスチャン・ローブがドライブするラリーカーを織り交ぜながら、今年100周年を迎えたシトロエンのヒストリーをドラマティックに振り返る。イケメンの主人公がヒッチハイクしながら時代時代のシトロエンライフを体験するというタイムスリップ仕立てなのだが、映像美もさることながら一貫しているのは「過去においても未来においてもシトロエンが目指すのは自由」というメッセージだ。


 
印象的だったのがスクリーンに映し出された衝撃的な言葉。「車は20世紀の遺物。もう誰も欲しがっていない。車が自由と独立をもたらす時代は終わったのだ、という人たちがいます」しかしシトロエンはそんな懸念をすぐに打ち消してみせる。「でも私たちは決して諦めません。自由な発想と情熱で車を再発明するのです」 
 
そんな流れでお披露目されたのが「AmiOneコンセプト」だ。この2人乗り超小型電動シティコミューターは、フランスでは16歳以上なら免許なしで運転できる自由に加え、スマホを使ったシェアリングにも対応。「5分でも5時間でも5日でも5カ月でも5年でもOK」という使い方の自由も提案している。
 
いよいよプレゼンは佳境へ。ステージ裏からAmi Oneコンセプトが登場するとダンスと歌が激しくなり、シンガーが高らかに「フリーダム! 」と歌い上げたところでフィナーレ。滅多なことでは拍手をしないプレスからも大きな拍手が沸き起こった。


 
100年に1度の大変革期を迎えている自動車。電動化、シェアリング、自動運転などにより退屈な存在になっていくという意見もあるが、それに対するシトロエンの答えはNon。「時代とともに車の在り方が変わっても自由なモビリティを通して彩りのある生活を提供し続けるのが自動車メーカーの義務であり、シトロエンはこれからもその先頭を走っていく。決して退屈はさせません」プレスから贈られた拍手は、そんな力強い決意表明への賛同と期待の表れである。

「都市での現代的で新しいモビリティ体験を実現する、革新的な完全電動オブジェクト」と謳われるAmi Oneコンセプト。公共交通機関や自転車などに代わるものとして設計されたという。

文:岡崎五朗 写真:望月浩彦、プジョー・シトロエン・ジャポン Words:Goro OKAZAKI 

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