フェラーリ専門 ファクトリーの挑戦

Photography: Hidehiro TANAKA

奈良に本拠を構えるナカムラエンジニアリングはフェラーリを得意とするファクトリーだ。顧客ニーズに併せた跳ね馬を国内外から仕入れて仕上げるという新たなチャレンジを始めた。

フェラーリを買うこと自体のハードルは、昔に比べて随分と低くなっていると思う。ネットで中古車検索してみれば常に800台程度が流通しており、クラシックから最新モデルまで選び放題なのだ。
 
一方で、街で安く買ったのはいいけれど、修理やメンテナンスで苦労する、というパターンが多くなりがちだ。特に新車保証がとうの昔に切れている古いモデルに関しては、掛かるコストも含めてたちまち頭の痛い問題となってしまう。その時々の最高性能を謳うべく開発されたイタリア製の高級スポーツカーである。真の性能を維持するためには知識と経験のあるプロフェッショナルの親身なサポートが必須であることは間違いない。
 
車は中古車専門店で買って、主治医を別に探す。できれば近所で。これが通常のパターンだろう。そこで中村一彦社長は考えた。顧客の希望する跳ね馬を日本やイタリアで見つけ出し、顧客と相談しながら仕上げて納め、そのまま継続して面倒みるという方法ならば、誰もが安心して古めのフェラーリのオーナーになれるのではないだろうか、と。通常とは逆の流れ、である。


 
取材時に入庫していた赤いディーノ208GT4は、顧客の要望に合うよう語学に堪能なスタッフがイタリアで探してきた個体だ。外装はリペイントされているらしいけれども、フルオリジナルのコンディション。ビカビカな状態でこそないが、イタリアで大事にされてきたことが車全体の雰囲気から分かる個体である。ディーノ刻印のある貴重なキーやユーザーノートも付属している。機関系の状態も上々で、特に大きく手を入れなければいけないところもなかった。ビカビカに仕上げることも可能だが、このコンディションを保ちながら乗ってもらうほうがいいだろうと中村社長は判断し、気になったところだけを仕上げてデリバリーするのだという。


 
もちろんイタリアでどのように使われてきたのか、細かなことは知る由もない。けれどもプロが真剣に観察すれば、ある程度のことは掴むことができる。顧客の望む状態までリフレッシュして届けたなら、その後のメンテナンスがスムースにいくことなど容易に想像がつくだろう。 

ナカムラエンジニアリングの新たな挑戦に期待したい。


問ナカムラエンジニアリング 
〒639-1103 奈良県大和郡山市美濃庄町271-13 
TEL:0743-54-6400 
https://www.nakamuraengineering.com/

文:西川 淳   Words: Jun NISHIKAWA 

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