美しきクラシックカーたちが京都から四国の香川県へとドライブツアー

Images:Concorso d ’Elganza Kyoto

日の雨がうそのようにあがった月曜日の早朝。ボクは再び二条城にいた。低い陽の差すなか、国宝二の丸御殿は黒みをいっそう増し、松は本来の青々しさを取り戻しつつある。そのなかで、色とりどりの名車たちは滴を湛え、いっそうの輝きを見せはじめていた。
 
そこかしこからクランキングの音が聴こえてくる。轟音が白い砂利を震わせる。週末の"コンコルソ デレガンツァ 京都 2019"を終えたエントラントの中から希望する17台が、今から四国の香川県へとドライブツアーに出掛けるのだった。
 
昨年から始まった、コンクール参加車両によるドライブツアー"ツール デレガンツァ"。大変な手間をかけて愛車を京都まで持ち込んでくれた外国からのエントラントたちにもっと日本を知って楽しんでもらいたい、という総合プロデューサー・木村英智氏の思いから始まった。もちろん、彼らを迎える日本の"いち車好き"として、世界の名車たちの走る姿を眺めてみたいという"下心"もあっただろう。 



本来ならコンクール参加者のみにオプションとして用意された特別なツアー。"いち車好き"としてコンクールを見物しようと思っていたボクに同道のチャンスなどあるはずもなかったけれど、前日に二条城でザガート創業100周年を記念するコラボレーション・クロノグラフを発表したショパールが特別に"ツール デレガンツァ 2019"参加枠を用意してくれた。しかも相棒はアルファロメオSZ(ES30)。木村さんの愛車だ。

"イル・モストロ"。その衝撃的なスタイルとアグレッシブな走りからザ・モンスターとも称されたネオクラシック・アルファの代表的コレクターズアイテムである。ベースはFRトランスアクスルのアルファ75。フィアット・チェントロ・スティーレのロベルト・オプロン(元シトロエン)とアントニオ・カステッラーナのデザイン案が採用され、210psを発するアルファロメオ製3リッター 60度V6SOHCエンジンを積んで、ローのザガート工場にて生産された。クーペSZとロードスターRZ、併せて1300台前後が造られている。


 
90年代はじめに取材して以来となるSZのドライブ。最低地上高が低くてバンピーなウィアンディングロードでアゴを摺ったことだけが思い出された。木村さんのSZは走行距離もまだ2万キロと少しという極上の部類だ。例の油圧車高調整もちゃんと機能している。
 
二条城からの出発が慌ただしかったため、いったいどのエントラントがツアーに参加しているのか、ミステリーなままツアーは始まった。最初の集合場所となったパーキングエリアに真っ先に飛び込んで、他の参加者たちを待っていると…。続々到着した名車たちのなかに、コンクールでベスト・オブ・ショーを獲得したランボルギーニ350GTZを発見し、思わずのけぞる。この3日間、350GTZを眺めつつ自分もSZで走るんだと思うだけで、心が弾む。
 
350GTZだけじゃない。6Cも、チシタリアも、ジュリエッタSZも、そしてクラシックランボ軍団も共に走る。
 
倉敷から揃って瀬戸大橋を渡ったあの光景は記憶のなかで一生の宝物となるだろう。香川五色台のワインディングロードや丸亀城バックに勢揃いした光景も忘れ難い。


 
借り受けた木村さんのSZも素晴らしかった。GTカーとして、スポーツカーとして、今乗っても十分に楽しいと思えるアルファだ。特に、気持ちよく吹け上がる6C エンジンと細かなアクセルワークに忠実なハンドリング性能に感銘を受ける。こんなに良い車だったとは、90年代にまだ20 代だったボクは気づいていなかった。ユニーク過ぎるカタチも今見ると味わい深い。まだ間に合うネオクラシックカーの筆頭だろう。思わず中古車を検索した。
 
例えばペブルビーチの"コンクール デレガンス"では"ツール デレガンス"に参加することが審査の加点要素になったりする。眺めても、そして走らせても素晴らしい名車たち。どんなにレアで高価なモデルであろうと、友や家族と一緒に乗って楽しみたいという国内外の"ツール デレガンツァ"参加者たちに改めて敬意を表したい。

文:西川 淳 写真:コンコルソ デレガンツァ京都 Words:Jun NISHIKAWA  取材協力:ショパール Special Thanks:Chopard

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