刺激的な文明と文化の場所│「コンセルヴァトワール」とは?

Photography: Mark Dixon

"コンセルヴァトワール"は文明と文化の場所だ。シトロエンはクラシックモデルを保管する施設として、2001年にシトロエン・コンセルヴァトワールを設けた。2017年末に一旦閉鎖され、現在は予約制で公開されている。

将来的には別の場所に新しい施設が設けられることになっている。本稿は、数年前に『Octane 』英国版に掲載されたレポートを元に、再構成したものだ。新しい施設がどのような展示になるのか、想いを巡らせながらお読みいただきたい。

パリの北、プジョー・シトロエンの敷地があったオルネーの工業地は、ロマン溢れる場所ではない。ここにシトロエンの工場が建設されたのは1970年代のことだ。近隣のシャルル・ド・ゴール空港と同様、建築物としての魅力もなかなかのものだった。アンドレ・シトロエン通りという地名にも期待が高まるが、そこで待っているのは霧に煙る石畳でも、アールデコ様式のメトロの入口でもなく、黄色く光るトラクシオン・アヴァンのヘッドライトでもない。ここでの自動車生産は2013 年に終了している。
 
シトロエン・コンセルヴァトワールは、自社の過去のモデルや興味深いワンオフを収集・保管している施設として設けられた。第二次世界大戦中はナチスに占領され、戦後も会社のトップは長らく過去の遺産に無関心だったが、それでも保管車両が膨大な数に上るところが、さすがシトロエンである。コンセルヴァトワールが開設されたのは2001 年のことだ。それまで過去の車両はパリの様々な場所にばらばらに保管されており、特に1990 年代前半は、あえて過去を無視しようとしていたようにも見える。だが、1997年にジャン-マルタン・フォルスがグループPSA の会長に就任すると、状況は一変した。フォルスはその年初めにレトロモビルを訪れて、自社の遺産を保護するために何らかの手を打つ必要性を認識したのである。


 
シトロエンの遺産には型破りなものも多い。コンセルヴァトワールの展示物には、1971 年製のヘリコプター、シトロエンRE2もある。ちょうどシトロエンがロータリーエンジンの開発に取り組んでいた時期のもので、文字どおり"空飛ぶシトロエン"だ。短期間ではあったが実用化されたGSビロトールと同様、ツインローター方式のロータリーエンジンを搭載していた。正直なところ、シトロエン製、それもロータリーエンジンのヘリコプターに進んで乗る人がいるだろうか。
 
こうした既成概念にとらわれない姿勢こそ、シトロエンが偉大なメーカーとなった所以である。その初期の例が、後輪がキャタピラになったケグレス式ハーフトラックだ。1920年代初頭にシトロエンのアフリカ遠征で使用された車両で、コンセルヴァトワールには2台ある。1台は1922~23年に自動車として初めてサハラ砂漠縦断に成功したP2ケグレスのレプリカだ。2007 年当時、広大な倉庫には400 台に上る膨大なコレクションが保管されており、隙間なくぎっしりと車が並ぶ。それを取り囲む柵の洒落たポールは、かつてあったエピネット工場で使われていたものだ。
 
コンセルヴァトワールの設立時にコレクションの管理を任され、2013 年までその職にあったドゥニ・ユイルは、シトロエンのモータースポーツ部門から移ってきた人物で、自らもSMをドライブするエンスージアストだ。メーカーの博物館は世界中どこでもそうだろうが、ドゥニも少人数のチームと共に、限られた人員と資金で悪戦苦闘を続けたという。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words and Photography: Mark Dixon

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