ポルシェの進化を如実に物語る4台を一挙に比較!│第一弾 356B カレラ2

Photography: Charlie Magee


 
41年の歳月を駆け巡る私たちの旅は356B から始まる。デビュー当時の356には最高出力がたった40bhpにすぎない1086cc のエンジンが積まれていたが、この究極の1台というべきカレラ2(排気量2リッターに由来する)のパワーユニットは、排気量はおよそ2 倍にもかかわらず最高出力は3 倍以上の130bhpに達し、125mph(約200km/h )の最高速度を標榜した。ここで紹介するカレラ2は、わずかに12台だけが生産されたとされる右ハンドル・モデルの1台で、ポルシェ904のピストンとより過激なプロファイルのカムシャフトを組み込むことでさらなるパワーアップを果たしているという。
 
上側に位置する吸気バルブ用カムシャフトは、下側に位置する排気バルブ用カムシャフトから垂直に伸びたベベル・ギア・シャフトによって駆動され、4 本のカムシャフトはいずれもスイングアーム式ロッカーアームを経由してバルブを開閉する。いうまでもなく、これはフォルクスワーゲンをベースとし出力も劣る本来の356用エンジンとは大きく異なるもので、ビッグ・ブロックを採用するなど大幅な改良が施された1498cc 仕様や1588cc 仕様がベースとなっている。点火プラグは1 気筒あたり2本で、このためディストリビューターも2 基備わっている。各シリンダーに混合気を送り込むのは、40mm のツインチョーク・ソレックスの役割である。
 


カレラ・エンジンを搭載したことを示す外観上の特徴としては、リアバンパーの下側に刻み込まれた垂直のスリット、そしてボディの中央付近から突き出した2 本のテールパイプが挙げられる。ホイールに空いたすき間にじっと目を凝らせば、ポルシェのロードカーとして初めて4 輪ディスク・ブレーキを装備していることに気づくだろう。これはATE(アルフレッド・テヴェスGmbH の略称)が生産したものだ。内蔵する2基のオイルクーラーに冷却気を導くと同時にホーンが発する音を前方に放つノーズ上のエアベントからは"棧"が取り除かれている。これらを別にすれば、カレラはスタンダードな356Bとよく似ている。
 
スピードメーターとレヴカウンターの盤面に刻まれた最大の数字が心躍る160mphと8000rpmとなること除けば、同様のことはインテリアについてもいえる。レヴカウンターがメーターパネルの中央に配置されているのは911と同じだが、隣に並んだメーターより一回り大きくするという措置はまだ採られていない。ビートルから受けた影響は、そこかしこに見てとることができる。ボディパネルと同色にペイントされたダッシュボード、リブ模様のゴムマット(イギリスでの価格が2 倍もするEタイプにも同様の装備があった)から突き出したブレーキ・ペダルとクラッチ・ペダル、長くてしなやかなギアレバーなどが、その代表だ。

編集翻訳:大谷達也 Transcreation: Tatsuya OTANI Words: John Simister  

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