公道走行できる蒸気機関車?!ドラマチックな感覚を体験する

Photography: Paul Harmer

6マイル/毎時と聞くとそう速くなさそうなのだが、田舎の道を数トンもあるすごい勢いで動くスチームで動く機械に乗って、地面から7フィートの高さに立っていると、実にとても速く感じる。

私はジョン・フォーラー社によって91年前にリーズで製造されたコリーンの操縦席にいる(少なくとも操縦の一部を担っている)。コリーンの持ち主である私のご近所の一人とその義理の息子ジェレミー・マーティンは、私がこの体験を喜ぶだろうと思ったのだった。

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ジェレミーと副運転士ジェームス・テイラー(カーリー・サイモンと結婚したシンガーソングライターではない)が火室に石炭をくべ、大きく水平のクロームメッキのレバーで、どのくらいのスピードで進むか上手く調整している間、私は、ジグザグに動きつつ、ハンドルの握り手を前、後ろとしながら操縦する。四苦八苦している私たちの目的地は、ウィールド・オブ・ケント・スチーム・フェア。スチームトラクションファンにとってのグラストンベリー(大規模なロックフェス)の様なものだ。



数マイル前、ベザースデンにあるジョージ・パブの外で落ち合った。コリーン、ジェレミー、ジェームスはすでに20マイル移動して来ていたので、休憩が必要だった。パブのスタッフにはみんなおなじみで、サンドイッチと冷たい飲み物、そしてコリーンの水分補給のための水道のホースを繋いでくれた。

スチームフェアまでのあと約5マイルの距離を移動するのに十分な石炭があるかどうかの話をしている間、ジェレミーとジェームスは、小さい頃から全てのスチームで動くものや、スチームで動く模型が好きだったと言うことを教えてくれた。鉱業エキスパートのジェレミーは6年前にコリーンを購入し、エンジニアのジェームスは、ケントとイースト・サセックス鉄道の蒸気機関車の修理をする仕事に携わっていた。ふたりともコリーンの熱さ、シューッやグルグルと言う音が本当に大好きだ。

厳密に言うと、彼女はトラクションエンジンではない。公道走行可のスチームで動く乗り物マニアは『彼女は10トンぐらいで小さいから、スチームトラクターだね』と言うだろう。重くて大きいトラクションエンジンは、畑を耕す時にスタックし動きが取れなくなったので、重量のある馬は、工業化されて以降も多くの農場で使われ続けた。

なので、スチームがこの様な仕事に使われる時には頻繁に、畑の反対側にいくつかのエンジンが置かれ、鋤と繋ぐためケーブルが使われた。また脱穀機の動力の様なその他の作業にも使われた。大きなサイズの類似機種と一緒に、スチームトラクターは牽引にも使われ、興行師のキャラバンから道路工事をする人の荷物にいたるまでを運んだ。コリーンは、1928年にカントリー・タイロン・カウンシルによって購入された2台のスチームトラクターのうちの1台として働き始め。しかしその時までに、スチームはガソリンや重油に取って代わられおり、フォーラーの最後のスチーム車両、ロードローラーは1937年に製造された。

ナショナル・トラクション・エンジン・トラストには、125のスチーム車両メーカーの記録があり、スチームの特徴でもあるパワーの即時性とトルクの強さがそのうちの数社に、湯のパワーを放棄するのを消極的にさせた。センティネルの4気筒スチームトラックは1930年代にもまだ製造されており、1950年代にも輸出のため少なくはあるが製造されていた。これらの洗練された設計により、時速50マイル出すことができ、これは車と同じくらいのスピードであった。

Words Martin Gurdon 抄訳:古川浩美 Translation: Hiromi FURUKAWA

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