公道走行できる蒸気機関車?!ドラマチックな感覚を体験する

Photography: Paul Harmer



これほど遅いものであっても、打ち付けるコンロッド、グルグル回るはずみぐるま、前後に動くピストンのチュフチュフチュフという音、バルブの開閉、機械の拷問の様でそうではない何か分からない音によって、こんなにドラマチックな感覚を体験できるのは、素晴らしいことでもある。そして熱、煙、蒸気と火もそれを演出する。

私が操縦する番になった時、前輪の内側は見えにくく溝に落ちるかもしれないから注意する様にと警告された。すぐにトラクションエンジンを操縦することは、ピラテスをしながら、同時にタバコを吸う様なものだとわかる。体を手回しドリルような体勢にして、膝を曲げる。そうすることによって背骨が押しつぶされない姿勢を確保できる。リアサスペンンションなし、分厚く短いトランスバース・リーフのフロントサスペンションなので、コリーンの乗り心地は、階段から数段まとめて落ちるのと同じ感じだ。



ステアリングは、チェーンでソープボックスカートの様なシングルピボットの硬い車軸に接続されたウォーム・アンド・ローラーボックスを採用している。動いていれば、想像するよりも早く、軽い。しかしホイールをまわし続けなければ、コリーンは、もちろんまっすぐ進んだり方向を変えたりし、そして私はそれを過修正し、歩くくらいのスピードでも驚く程のシーソーの様な動きを引き起こしてしまう。とても大変な作業だが、全てが思う様にうまくいくと不思議とうきうきする。スピードを調節するレバーも操作しなければならない。それには、レバーを前に倒しすぎたり、逆にあまりにも倒さなかったりを避けるため、よくマシーンを理解し同調する必要がある。

投入された石炭の量が足りていないトラクションエンジンの上(“中に”とはとても言えない様だ)に乗っていると、汚くグレーの煙を吐き出す。間もなく目的地に到着する頃に、再度水を入れ、無煙炭の燃料を入た。コリーンは私たちを完全にスモーク状態にする。オーバーオールを着て、不快な石炭と古くさい潤滑油の蒸気漬けになった髪で私は暑く、すすだらけだ。同時にものすごい高揚感に浸ってもいる。この体験が終わって欲しくはない、でも同時に終わることを嬉しくも思う。

もしあなたがまだコリーンや同じ様な乗り物の魅力が何なのかと疑問に思っているなら、ジェームス・テイラーが上手く答えてくれる。

「彼女は生きていて、息をしているものなんだ。単純に始動して、すぐに走り出してくれるなんてことは期待しちゃいけないよ」



1927年製 フォーラー・スチームトラクター“コリーン”
エンジン 2気筒コンパウンドスチームエンジン
パワー 4NHP(ノミナルホースパワー)
トルク 不明だが大きい
トランスミッション 2段、クラッチなし停止時に作動
ステアリング ウォーム・アンド・ローラー チェーンで硬い前車軸に接続
サスペンション 前:シングル・トランスバース・リーフ・スプリング、リア:硬いゴムタイヤ以外なし
ブレーキ 回すハンドルで操作するリアホイール内部にある木製のブレーキシュー
重量 10トン
パフォーマンス 低速時時速4マイル、高速時時速12マイル

Words Martin Gurdon 抄訳:古川浩美 Translation: Hiromi FURUKAWA

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