ポルシェの進化を如実に物語る4台を一挙に比較!│第二弾 911 2.7 RS

Photography: Charlie Magee



ホモロゲーション・スペシャルとして開発された911RSにも似たような弱点があるのだろうか? 試乗したのは、外観はツーリングだが高性能なスペックを備えた1台だ。現在のオーナーがこの911RSを手に入れたのは、昨今のように価格が高騰するよりだいぶ前の1996 年のことで、以来、ヒルクライムなどの競技にコンスタントに出場しているという。ただし、車自体はオリジナルの状態に保たれており、先日装着したばかりというピレリ・シンチュラートCN36もサイズはオリジナルと同じものを選んでいる。
 
この企画で登場する2台目の"カレラ"は、RS 愛好家たちが長年にわたって認めなかった"ある事実"を暴き出した。それは、これがいかに素晴らしいロードカーであるか、ということだ。911RSに関する歴史、解説書、もっともらしい評価などは一旦、すべて忘れていただこう。正しく乗ればRS は極めて魅惑的なスポーツカーであり、オーナーの多くが維持費だけを投じて毎週のようにステアリングを握らない理由が私には理解できない。

次に申し上げることはおそらくご存じだろうが、念のため、911RS のバックグラウンドを手短にご説明しよう。RS2.7は合計で1590 台が生産された。そのうちの大半はライトウェイト仕様で、すべてが911Sに搭載された機械式燃料噴射装置付き2.4リッターをベースにしたビッグボア版を積んでいる。新設計のアルミ製シリンダーバレルは、従来のバイラル・ライナーに換えてニカジルをコートしたシリンダー壁を採用。2687cc の排気量ながら、最高出力は190bhpから210bhpに引き上げられた。これに比例してトルクは159lb-ftから188lb-ftに増強され、刺激的な動力性能を実現した。大きく張り出したフェンダーに覆われたリアタイヤはワイドサイズなものに改められ、エンジンパワーをしっかりと路面に伝える。しかも、911として初のリアスポイラー、あまりにも有名な"ダックテール"が最高速度の150mphまで後輪の接地性を保証するのである。


 
この911には、古き良き時代の車が備えていたデザイン上のデリカシーを備える。スリムなバンパー、ウィンドウを取り囲む金属製モール、ヘッドライトの下に設けられたエア・グリル、むき出しのサイドシルなどが、ハイパワー・エンジンや強く張りだした筋肉質のフェンダーなどがほどよく組み合わされている。現在の基準から見ても、0-60mph 加速の5.5 秒はなかなかのもの。しかし、それはRS が備える刺激的な能力の一部に過ぎない。
 
もしもこれまでRS2.7に乗ったことがないのであれば、運転席に腰掛けたときの印象は初期に作られた多くの911に似ていると考えればいいだろう。ややアップライトな着座姿勢、フロアから生えたペダルのオフセット、中央にレヴカウンターを据えた5 連メーターのダッシュボード、サポートが弱そうで実はしっかりと身体を支えてくれるシート、あまりスポーティに映らないうえに親指で押すホーンボタンを左右にひとつずつ備えた4本スポークのステアリングなどが、その典型的な例である。そして、ややルーズな動きをする長めのシフトレバーと、その根本部分を覆う大きめのゴム製ベローズも初期型911のお約束だろう。



エンジンを始動させればヒューンという金属音が耳に届き、ファンからも高い音色のノイズが聞こえるいっぽう、フラット6は伝説的なバリトンの雄叫びを上げる。ギアボックスのローを見つけ出すのは難しい(この車が機械的な部分で天の邪鬼な一面を見せるのは、おそらくこれだけだろう)。

編集翻訳:大谷達也 Transcreation: Tatsuya OTANI Words: John Simister  Photography: Charlie Magee

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