「総合的な自動車メーカーだからこそ哲学が大事」

Photography:Kazuhiro NANYO , PEUGEOT CITROËN JAPON

半年前に就任したばかりのシトロエンデザインダイレクター、ピエール氏。"非クルマ的"アプローチが大事になっていく、という。

プレミアムに踏み込まない総合的な自動車メーカーだからこそ、哲学が大事になります。価格で勝負の大衆車ではなく、異なるやり方で大衆的であるべきなんです」と、ピエール・ルクレルク氏は力強く述べる。

創業から100年もの長きを積み上げてきたフランスの歴史的な自動車メーカーでありながら、シトロエンはつねに大胆で新しいテクノロジーを採り入れ、時には破壊的であったとすらいう。

「例えばアミ6(シス)などは、英国のブレッド&バター・カー(60年代のモータリゼーション期に日常的に乗られる車を指した表現)の様式を採り入れつつ、少しディスっているところがありますよね(笑)。シトロエンは、もっとヒューマン・オリエンティッドというか、より自由です。創造性の蓄積、人間への近さや親しみやすさ、そうした積み重ねとしての得られた快適性が、シトロエンにはあると個人的には感じています」
 
前任のデザインダイレクターはドイツ車のメーカーに引き抜かれて発ったが、逆にドイツのメーカーを経験してきたルクレルク氏は、どのようにシトロエンを変えていくのか?

「楽観性、シンプルさとピュアさ、人間に近いといった価値観を変えることはしないですが、シルエットやデザインランゲージ、フロントマスクやリアの表情、インテリアの主要構成は、今後はパワートレインの電化も進んでいきますし、自ずと変わるでしょうね。私がゼロから指揮するプロジェクトが世に出るのは先の話ながら、インテリアとエクステリア、双方のデザイナー全員で約25名いますから、彼らと練っている段階です。ぶっちゃけ言ってしまえば、今は自由演習の段階で絵を描かせていて、車の絵でさえないです(笑)。でも、そうした"非クルマ的" アプローチが、すでにジュネーヴで発表したコンセプトカーのAmi Oneにも表れており、大事になっていくと思います」
 
様々な国で色々な自動車メーカーの異なる文化を見てきたルクレルク氏いわく、ドイツ車は組織的にはしっかりしていて、進行中のプロジェクトについては計画的で変化が少ない。また中国のメーカーでは、組織が組織らしくないまま朝令暮改というほど変化に富む一方、韓国のメーカーは組織は堅固だが、プロジェクト関連の変化には事欠かないという。その上でシトロエンはどうか? と問うと、こんな答えが返ってきた。

「組織的に小さなチームで効率がよく計画的で変化は少なめながら、とても小回りが利くのがシトロエン流ですね」


ピエール・ルクレルク
ベルギー生まれでデザインダイレクターには半年前に就任したばかり。韓国の起亜モーターで1年、中国のグレートウォールで5年ほど勤め、BMWのエクステリアデザイナーに抜擢され13年の経験を積んだ後、フランス語圏に戻ってきた異色の経歴をもつ。

文:南陽一浩 Words:Kazuhiro NANYO 写真:南陽一浩、プジョー・シトロエン・ジャポン 

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