BMW M3との再会 箱形の体に秘められたレースの血筋

Photography Alex Howe

ホモロゲーションスペシャルとして誕生したBMW・E30型M3。久しぶりにドライブして、その箱形のボディに宿るレース魂を再確認した。

私は一時期、初代BMW・M3こそ世界一のハイパフォーマンスカーだと考えていた。もっと速い車も、もっと華やかな車、耳に心地よい車もある。だが、パッケージとしての使いやすさと人の心をつかむ魅力でM3に勝るものはなかった。

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私がそう感じたのは、1987年3月、ポルトガルのエストリル・サーキットだった。コンチネンタルタイヤが、発売したばかりのスポーツコンタクトを試すために設けたテストだ。用意されていたテスト車両の中で、M3は断トツだった。他はポルシェ944、トヨタMR2、アウディ80クワトロ、そしてツーリングカーレースの宿敵だったメルセデス・ベンツ190E 2.3-16である。

M3はまるで魔法の乗り物だった。私は何周もしたが、永遠に終わってほしくないと思ったほどだ。カージャーナリストになってまだ日が浅い私にとって、ドライビングが最も急激に上達したのがこのときだった。なにしろM3なら、あらゆる走りを試せる上に、ヘマをしても厳しいしっぺ返しを食らう心配がないのだ。当然ながら、1台欲しくてたまらなくなった。


私が次にドライブしたM3は、おそらくイギリスに輸入された最初の1台だろう。今度は自分がよく知る公道を走ってみて、私はますます惚れ込んだ。サーキットでは優秀なのに公道では魅力が半減する車も多い。だが、M3は両方で抜きん出ていた。乗り心地は最近のスポーツカーには類のないほどしなやかだ。また、繊細なパワーステアリングが、足元で起きていることをつぶさに伝え、素早く正確な修正を可能としていた。それがドライバーに自信を与えるのだ。

M3のベースとなったのが、BMW 3シリーズの第2世代、E30(1982~1991年)である。E30は様々な意味でよい車だったが、パワフルなバージョンを手荒に扱うと突然のオーバーステアに見舞われることで有名だった。その点でM3はまったく違った。完全に予想可能で、望みうる限り最高にフレンドリーなのだ。

M3のボディパネルでE30と共通するのは、ドアとボンネットとルーフだけで、角張った見た目にもかかわらず、空気抵抗係数はわずか0.33である。また、ブリスターフェンダーを採用して幅広のタイヤを履き、前後にスカートも備える。それでも全体にE30の地味な印象はそのままなので、たいていの人はリアウィングを付けた通常の3シリーズだと思うだろう。インテリアの違いも、レカロ製シートとドッグレッグ式のシフトパターンくらいである。

だが足回りはまったく異なる。特にフロントのキャスター角は、標準のE30に対して3倍も大きい。また、アンチロールバーの装着方法を変更して、ステアリングのレスポンスを大幅に改善し、E30のほぼ2倍にあたるロール剛性を実現した。

Words John Simister 抄訳:木下恵

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