BMW M3との再会 箱形の体に秘められたレースの血筋

Photography Alex Howe


もうひとつの大きな違いが直列4気筒エンジンである。M1のために開発され、M5やM635CSiで使われた直列6気筒ユニットから2気筒を切り取ることで、吹け上がりの鋭い、はつらつとした性格に仕上がった。2.3リッターの排気量で、ライバルを上回る出力200bhpを発生(キャタライザー仕様は圧縮比が低く、出力は195bhp)。ボッシュ製MLモトロニック燃料噴射装置を備える。

今回試したこのシルバーのM3は、大きくいえばエヴォリューションIIで、出力が220bhp(キャタライザー仕様は215bhp)に向上している。その中でも、M3で最も成功を収めたドライバー、ロベルト・ラヴァーリアの名を冠した限定モデルである。はたして、過去に感じた魅力に変わりはないだろうか。

シートに腰を下ろした途端、懐かしさが溢れ出した。あの角張ったメーターパネルに、運転席側を向いたセンターコンソール。BMWが「究極のドライビングマシン」をキャッチフレーズにしていた頃の特徴だ。ただし、このM3ラヴァーリアはキャタライザー仕様のため、記憶ほど速くは感じなかった。



スロットルペダルへの反応も、リニアに鋭かった記憶があるのに、このM3は踏み始めが少々鈍い印象だ。それでも4750rpmまで回すと、エンジンのキャラクターが変貌した。サウンドが硬質になって特有の活きのよさが現れ、レブリミッターを打ってもパワーが湧き出してくる。少し運動が必要なだけだったのだ。

ほかの特質は記憶どおりだった。ドッグレッグパターンに慣れれば変速はしやすいし、乗り心地も抜群。ステアリングとの心地よい一体感、ハンドリング、そしてあの温厚でフレンドリーな性格。M3への絶対の信頼感が、ドライビングの喜びを倍増する。その点では最新のどのBMWをも上回るほどだ。

M3がどうしても欲しい人は、今すぐ行動を起こしたほうがいい。特に後期のスポーツエヴォリューション仕様(2.5リッター、出力238bhp)は高騰している。標準のM3は製造数こそ多いが、状態のよいものは極めて少ない。失ってから価値の大きさに気づいても手遅れだ。

Words John Simister 抄訳:木下恵

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