スター誕生│スティーヴ・マックイーンと共演した本物のフェラーリ 後編

Photography: Jerry Wyszatycki


 
この映画は、別のアングルからの映像や別のシーンを同時に同じ画面に映し出す革新的なスプリットスクリーン手法を採用したことでも特筆される。また誘惑的なチェスの試合での映画史上最も長いキスシーンでも知られている。その場面の撮影には何日もかかったという。
 
スティーヴと女優のニール・アダムスの息子であるチャド・マックイーンは当時7歳だった。「私と母はいつも撮影現場を訪れていました。グライダーのシーンの撮影中には、父がリックマン・メティス・モーターサイクルに乗せてくれました」と語っている。
 
チャドはNARTスパイダーを見た覚えはないというが、彼の父は明らかにそれを運転し、気に入ったことは明らかだ。何しろ実際にカリフォルニアの代理店であるハリウッド・スポーツカーを通じて、キネッティからブルー・セラのカラーにブラックの内装を持つno.10453を買ったほどである。「父の車は素晴らしかった。小さい頃は不思議に細かな点を覚えているものだが、アンテナの先端をブルーに塗っていたことを覚えている。下げている時はもちろん見えないんだけれどね。しかし、父はそれほど長くスパイダーを持っていなかった。ある日、俳優のスチュワート・ウィットマンのマリブの家に向かう途中、二人の水兵がミニスカートの女の子に気を取られ、追突してきた。押されて前の車に突っ込んだ。それから二度とスパイダーを見ることはなかった」
 
ニール・アダムス・マックイーンはもっと率直に答えてくれた。「私にとっては、車は車。とにかく私たちはとてもたくさんの車を持っていた。フェラーリも何台かあったと思う。実際、34歳の誕生日に彼にプレゼントしたこともあった。だけど私にはどの車が他の車とどう違うかさえ分からない」

映画に出演した当のスパイダーについては、ロジャー・コルソンが正確に記憶している。「6~7週間経って撮影が終わった後、ボストンに車を引き取りに行った。車はワインレッドに塗られたままだった。9月にはライムロックへ、今日我々がいるまさにこの場所へ、持ってきた。ここでテストをすることになっていた『ロード&トラック』のエンジニアと会った。他にもニューヨークタイムズから二人のジャーナリストがやってきていた。私は彼らを乗せて一周ずつ走り、その後自分たちで試乗したんだ。51年前、まさにここにいたんだ」羨むべき『ロード&トラック』の仲間は、いみじくも世界一満足できる車であると記している。
 

編集翻訳:高平高輝 Transcreation: Koki TAKAHIRA Words: Marc Sonnery 

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