スター誕生│スティーヴ・マックイーンと共演した本物のフェラーリ 後編

Photography: Jerry Wyszatycki



その後、09437スパイダーは、フェラーリ・コレクターとして有名なノースカロライナ州ハイポイントのノーム・シルバーに売却された。彼は他にも250LM や400SA 、デイトナ・スパイダーなど、マラネロ製の傑作を所有していたが、他の愛好家たちに惜しげもなく披露して18 年にわたってスパイダーを楽しんだという。その間、フェラーリ・スペシャリストのアンディ・グリーンがメンテナンスを担当していた。
 
1985年、フロリダ州フォートローダーデールのデイノ・デイヴィスが購入した後、初めてのフルレストアを受ける。この作業はアル・ロバーツが請け負った。ロバーツは究極のコンペティション275( 6885 )、すなわち3 台製作された275GTBC/LM(事実上のGTO65)のうちの一台をメインテナンスしていたことでも有名な専門家である。09437スパイダーは、この際にオリジナルである"ジャッロ・ソラーレ"に戻された。それ以降、何十年も米国内で引き継がれていくことになる。
 
何度かオーナーが変わった後、1989年には借金の担保となる扱いも受けたが、1993年に再び所有者が変わり、その後ブルース・ラストマンが1996年に手に入れた。その1年後、あるカークラブがコロラドを訪問した際に、09437スパイダーは、一時的に車の面倒を見ていたマイク・ドパジャ率いるMPHワークショップのバックヤードに保管されているところを発見されたという。この時、ひとりの若いエンスージアストが、伝説のフェラーリを見つけて興奮し、他のクラブ員に即興の解説をはじめ、あげくにトランクを開けてチョークの跡が残された"ピットボード"のトランクの床板を皆に見せようとしたという。もちろん彼は誰にも許可を取っていなかった。それを見たワークショップのオーナー夫人が静かに、だがきっぱりと「そのままにしておきなさい」と注意したという。実に適切な注意だった。
 
ラストマンは1998年のコロラド・グランドに参加したが、その後2005年のペブルビーチでのグッディング&カンパニー・オークションに出品、そこで東海岸では有名な現在のオーナーが手に入れた。2007年、彼はフェラーリの60周年記念イベントの際にマラネロを訪れた。09437スパイダーにとって初めての里帰りである。

編集翻訳:高平高輝 Transcreation: Koki TAKAHIRA Words: Marc Sonnery 

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