ゴールドに輝くアルミニウムボディの個性派ロータス 26R 前編

Photography:Paul Harmer


 
タイプ26とはもちろんエランのことだ。エランは同じようにグラスファイバー・ボディを採用していたが、それを支えるのは軽量なスチール製のバックボーン・シャシーであった。ユニークな設計思想だったが重いのが最大の欠点だったエリートに対して、このようにエランはまったく異なる構造を採用しており、それがために何より軽くできたのが特徴だった。エランのエンジニアリングで信頼を得てロータスの要職に就いた故ロン・ヒックマンによれば、そのシャシーはロトフレックス・カップリングが使えるかどうか試すために作られたテストリグから発展したものだという。ちなみに、ハーフシャフトに使われるこのカップリングは、ランド部のドライブシャフトの重要部分を形成する4個のラバードーナッツからなり、等速ジョイントを使わないのが特徴だが、チャプマンはこれに対して深い疑念を抱いたため入念にテストしたのだ。


 
エンジンはフォード・アングリアのそれをベースとした1558ccで(ごく初期には1498ccも少数存在した)、接ぎ木のような形状で見た目はよくないが信頼性のあるツインカム・ヘッドを備え、フォード・コンサル・クラシックの4段ギアボックスと組み合わされた。1962年にデビューしたあともチューンナップキットが用意されたり、ファクトリー仕立ての高性能版が用意されるなどさまざまな仕様が加わって、エランは1970年代まで生産。販売台数は1万台以上と、エリートの実に10倍に当たる大ヒット作となった。
 
商業的なサクセス・ストーリーの中にはいいニュースもあれば悪いニュースもある。後者ではサスペンションの設定が一時期問題になった。エランはソフトなサスペンション設定を採っていたために一般路での乗り心地はいいが、サーキットでは何もモディファイしないと柔らかさがいっそう顕著になるという想定外の事実が明らかになったのである。細身のバックボーン・シャシーと薄いグラスファイバー・ボディは横方向からの衝撃には弱かったが、エランは根っから持つミサイルのような素早さゆえに、我が物顔で走る大排気量エンジン車をカモにでき、ドライバーを得意にさせる車であった。

だからエランのレース仕様が発売されると噂が起こったとき、エラン・オーナーは色めき立った。究極のスペシャルなスポーツ・バージョンなら上記の問題が解決されるはずだからだ。そうした声に応えて1964年に誕生したのが26Rである。
 
26Rへの変更は、ソフトなサスペンションと壊れやすいドライブシャフトの改良、それにサスペンションのピックアップポイント周辺の剛性不足を改良することに焦点が当てられた。その対策とは、競技仕様の頑丈なウィッシュボーン、シャシーの剛性アップ、より太いスタビライザー、スライド・スプライン式のハーフシャフトの採用だが、ほかにもボディシェルより軽くされ、その結果見た目の美しさはそのままに、純然たるレースカーとしても一人前な姿に大変身したのである。エンジン出力も160bhp近くまで強化された。そしてこのあと、このストーリーの主役、イアン・ウォーカーが登場するのである。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:James Elliott 

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