30年以上生産されたベストセラー商用車?

PEUGEOT CITROEN JAPON

終戦後いち早く発表されたシトロエン新型車は、実は2CVではなく商用車のタイプHで、1947年のパリサロンで発表された。タイプHは、トラクシオンアヴァンのパワートレーンを流用した前輪駆動の商用車である。ただしエンジン=デフ=ギアボックスの配列を前後逆にして、先頭にエンジンが置かれている。
 
さらに特徴的なのはその外観である。コルゲートパネルで車体を形成しており、しかも平板を組み合わせている。大がかりなプレス機械が必要な曲面デザインを廃し、薄い鉄板でも強度が出るようにコルゲート処理を施したのだが、これが大胆にもキャビン部分まで適用されたのがなんといってもユニークである。

車体はモノコック構造なのでじゃまなフレームがなく、プロペラシャフトのない前輪駆動であることと合わせて、荷室の床を低くすることができた。さらに運転室と荷室の間に隔壁がなく立って移動できることや、側面のドアがスライド式になっていることなど、使い勝手がよく考えられている。もちろん四角い車体や四隅に配したタイヤ、キャブオーバーデザインなど、容積率を最大限にする設計でもある。




こういった徹底した効率の追求と、ユーザーの実態にきめ細かく応えるという設計哲学は、2CVにも通じるものがある。ストレートに目的を追求したことから、商用車でありながらも、えもいわれぬ魅力を醸し出すようになった。
 
タイプHの原型は戦前に販売されていたTUBにある。戦争前に1800台あまり生産されたTUBの設計手法をさらに進化させて、タイプHが開発された。タイプHは当初はトラクシオンアヴァンの1911ccを積んでいたが、その後ディーゼルも搭載された。
 
日本では今でも野外イベントの出張販売車としておなじみの存在だが、フランスでもその点は同じようである。フランスでは無蓋車などいろいろなバージョンが走っていた。

文:武田 隆 Words:Takashi TAKEDA

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