セントジェームス 伝統のストライプを着ること

Photo:SAINT JAMES

1889年より続く伝統的なフランスブランド、セントジェームス。定番デイリーウェアの"ボーダーシャツ"は、潮風当たる海の暮らしから発想を得た実用性あるものだった。

フランスでもフランスっぽさ、つまり「フレンチ・タッチ」が見直されているここ数年来、巷でいうところの「ボーダーシャツ」が勢いを盛り返している。「典型的なフランス人像」を外国人に描かれる時だけでなく、フランス人が自ら描く時にも、腕の中のバゲットや頭上のベレー帽と同じく必ず身に着けている普及の大定番。それが、かのボーダー柄のボートネックの長袖シャツであり、その造り手たるセントジェームスは今年、創業130年を迎えた。


 
セントジェームスはフランス北西部のバス・ノルマンディ地方、モン・サン・ミシェル近くの同名の村にある。塩気を含んだ草を食んで育ったプレ・サレと呼ばれる子羊は、今やその美味さでも知られるが、この界隈の羊毛を紡績する工場が稼働し始めた19世紀半ばは革命政府から帝政の時代で、かの有名な世界遺産はまだ刑務所に使われていた。

そして元々、ノルマンディやブルターニュの冷涼な地方で漁師たちが海風から身を守るために着ていた「シャンダイユ・マラン(漁師風のプルオーバーセーター)」は地産の羊毛、つまり水分をある程度弾きつつ保温性の高いウールで編まれたボーダー柄のセーターだった。実用性が買われてフランス海軍の水兵の制服にも採用されたほどだ。そして、これらのウールを供給する紡績工場が今日のブランド名でもある地名「セントジェームス」を打ち出したのが、1889年のことだった。


 
鉄道や観光が発達して海辺にツーリストが避暑に訪れるようになった20世紀初頭、シャンダイユ・マランとそこから派生した、より肌触りが優しく吸湿性に優れたコットン編みのボーダーシャツは、バカンス着として都会の人々のワードローブに瞬く間に浸透した。ヨットなどを嗜む人々に元より実用的だったこともあるが、バカンス先から持ち帰った地産のワークウェアかつ、街にいながらにしてノンシャランとした寛ぎ感を漂わせるスタイルは、「フランス人=バカンス」の神話を形成するのに少なからず貢献した。



ちなみにセントジェームスの工場は第二次世界大戦後、本来の紡績事業を止め、ウールとコットンそれぞれの編み生地による服作りに専念し、80 年代からは輸出も拡大。2013年にはフランス政府による「EPV(Entreprisedu Patrimoine Vivant、生きた歴史遺産をもつ企業)」認定も受けている。

 
実際、伝統的スタイルではストライプの幅は20~21㎜、本数は身頃、両袖とも14~15本と決まっているとか。ブルターニュに限りなく近いノルマンディの地で、変わらず長く造られ続けているがゆえの、突き詰められたシンプルさと気取らない優雅さは、他ではマネのできない素材のよさや造りの安定感でもある。ブレない、不朽のフレンチ定番であり続ける理由は、この辺りにあるだろう。

フランスメーカー同士として、セントジェームスはシトロエンとコラボレーションもしている。ルーフにストライプがさり気なくあしらわれているC3だ。



カラーはフランスらしくコバルトブルー、ブランバンキーズ、サーブルのトリコロールカラー3色展開。Cピラーにもセントジェームスのロゴステッカーが貼られている。フロアマットもオリジナルの仕様で、ボーダーでパイピングされている。



成約プレゼントとしてセントジェームス×シトロエンコラボレーションボーダーTシャツが含まれている。このとことんこだわりの詰まった1台は日本独自企画のモデルであり、日本のセントジェームス、シトロエンファンにとっては嬉しいことであろう。価格など、より詳しい情報はこちらをご覧いただきたい。

文:南陽一浩 写真:セントジェームス  Words:Kazuhiro NANYO 

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