「短命の失敗作」と思われた古風な1台とは?

PEUGEOT CITROEN JAPON

大成功して生産期間が長くなったモデルは、モデルチェンジがすんなりいかないことがしばしばある。2CVの場合もそうであった。2CVの発表から20年近くたった1967年に世に現れたディアーヌは、2CVのリニューアルという役を託されていた。しかし一時は2CVの販売台数をしのいだものの、そのあとは予定どおりにいかず、結局2CVよりも先に生産終了となってしまった。

そのためディアーヌは失敗に終わったというニュアンスで語られることがある。ただそれは2CVが特別すぎたともいえる。前述のように、2CVは石油危機の状況などもあって1970年代に入ると人気が再上昇した。ディアーヌが出た翌年の1968年には年間生産台数は5.7万台にまで減じていたが、その後回復して1974年には16.3万台に達した。2CVが最も多かったのは1966年の16.8万台だったから、まさに奇跡の復活である。
 
実際のところ、"短命の失敗作"と思われかねないディアーヌも、16年間に約144万台がつくられており、ふつうの4444車としては立派な成績である。ちなみに2CVは、乗用車だけで52年間に約387万台生産されている。
 
ディアーヌの外観デザインは、どこかほかのシトロエンとは雰囲気が違う。それもそのはず、ディアーヌのデザインを初めに依頼されたのは、元パナールのチーフデザイナーだったルイ・ビオニエであった。パナールは歴史が古いフランスの名門メーカーで、戦前には先進的な高級車づくりで名を馳せていた。戦後は2CVと同様な空冷フラットツインエンジンのFWDを採用したディナと、その派生モデルを生産していたが、ほかのフランスの高級車メーカー同様に窮地に追い込まれ、1955 年にシトロエンの軍門に下った。

ディアーヌは、どことなくシトロエンらしくない古風な雰囲気がある。ただサイドの彫刻的なデザインは、パネルの強度を高めてもいるようだ。仕上げとしては、シトロエン内部のスタッフ、ジャック・シャルトンがあたっている。ディアーヌという車名も、ディナをはじめとしたDyで始まるパナール各車と共通性があると指摘されているが、これにはさらにディ・アーヌの語呂合わせも含めているという説がある。ディ( di )は2 、アーヌ( âne )はロバで、「2 馬力」の2CVに合わせたというのである。

文:武田 隆 Words:Takashi TAKEDA

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