存在感抜群のオフロードも走れるレジャービークル

PEUGEOT CITROEN JAPON

メアリは、2CVの派生車種としては、ディアーヌ以上の存在感がある。シトロエンブランドのヘリテージとして今もその価値が認められており、現在そのコンセプトをEVで復活させたE-メアリが作られている。
 
メアリはある意味では戦前に構想された2CV本来の資質を、しっかり受け継いでいるといえる。2CVが持っていた荷物が運べる軽量な多目的車という性格や、悪路走破に優れたサスペンション特性を活かして、オフロードビークルとして商品化された。もともとは、樹脂成型の専門メーカーであるSEAB社が、シトロエン社に企画を持ち込んだのが始まりで、シトロエン社が興味を示したことで、カタログモデルとして商品化されることになった。

当初は作業用の車として考えられていたが、その後レジャービークルとしても売り出すことになった。1960年代には、フォルクスワーゲンのバギーがそうだったように、オフロードも走れるレジャービークルが世界的にブームになっており、そのブームに乗って商品企画されたのであった。
 
1968年5月のプレス発表会場は、パリ西方の大西洋に面した高級避暑地ドーヴィルであり、どのようなユーザーにアピールしたかったのかが想像できる。1968年は、フランスでまさに学生運動が激化した年で、世の中に「自由」の風が強く吹くさなかに、この自由な車は誕生した。
 
メアリを特徴づけるその車体はABS樹脂製で、当時はまだ新しい素材だった。熱硬化性ではなく熱可塑性樹脂なので、成型に焼き入れの必要がなく、材料に着色ができて、塗装工程を省ける。耐候性があるうえに損傷したらその部分のパネルを換えて、簡単に修理できる。
 
軽いこともあって、ストロークが十分な2CVのサスペンションの悪路走破性がよく活きていたメアリだが、1980年には4WDモデルも追加された。2CVをベースにしたクロスカントリービークルは、ほかにも発展途上国などでいくつかのモデルがつくられている。

文:武田隆 Words:Takashi TAKEDA

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