ブランドの伝統的世界観を現代に。「シトロエンここにあり!」

PEUGEOT CITROEN JAPON

DS3が誕生して新しく「DS」が始動してから、そちらは華々しく新型車が出てくるものの、「C」のシトロエンのほうは一時期やや地味な存在になりかけていた。それを破って「シトロエンここにあり! 」と思わせたのが、2014年2月5日に発表されたC4カクタスである。わざわざ日付まで記述するのは、それがアンドレ・シトロエン生誕の日であるからだ。
 
C4カクタスの源流は、2007年フランクフルトショーで披露されたコンセプトカーのCカクタスである。Cカクタスは、ミニマリズムと実用性を追求した2CVを現代に甦らせたようなところがあり、省資源と快適性を、合理的に両立させようというモデルだった。温暖化などの地球環境問題が深刻になる21世紀に、シトロエンらしいエスプリでもって、それに対する解答を提示するという試みである。
 
それから何年かして、シトロエンブランドの今度の新型車は、そのCカクタスをヒントにしたなにか革新的な経済車になるらしいという噂が流れ、シトロエン幹部もそれを否定していなかった。そして登場したのがC4カクタスだった。約60年ぶりに、2CV信望者の審美眼にもかなうような、いかにもエスプリがあり、ある種のスローライフ的感覚を持つ車が誕生した。2CVだけでなく、ことによるとさらにルーツをさかのぼって、アンドレ・シトロエン時代のタイプAにも通じるようなところがないともいえない。とにかく非常にシトロエンらしいのである。
 
Cカクタスとはスタイルもコンセプトも大きく変わっているが、軽量で燃費を追求しているのは変わらない。C3をベースにしながらホイールベースが2590mm まで延長されて、全長は約4150mmとC4よりも長く、たっぷりある。それでいて車重は1000kgちょっとしかない。エンジンはガソリンだと3気筒1.2リッターNAで非力ではあるが、走行安定性は悪くなく、なにより雲にのったようなソフトな乗り心地がシトロエンらしい。

経済性を追求し、シンプルに徹しながら、センスよくエスプリの効いた内外装のデザインは、独特の存在感がある。快適性とともに安全性も追求し、独自のルーフエアバッグを備えるのもトピックスである。外観上の特徴にもなっているボディサイドのエアバンプは、中に空気を入れたポリウレタン素材で、クッションとしての機能も果たしている。

文:武田 隆 Words:Takashi TAKEDA

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