本物を超えるフェラーリのレプリカ│完璧さを追い求める飽くなき探究心

octane UK

1967年のレーシングカー、フェラーリ330 P4の精巧なレプリカを製作したイギリスの工房を訪ねた。

レプリカは近年のクラシックカーブームで広く容認されるようになった。メルセデス・ベンツ博物館で展示している1930年代末のグランプリカー、W154もレプリカだ。それを手掛けたのが今回訪ねたRMウィルソン・エンジニアリングである。そこは意外にも、レンガ造りのこぢんまりとしたコテージだった。ロブ・ウィルソンは1973年に独立して会社を興し、フェラーリ125のレプリカ製作をはじめ、数々の名車にフルレストアを施してきた。にもかかわらず知名度が低い理由を、ワークショップにいた顧客が教えてくれた。「ロブは宣伝が、からきし苦手なのさ」

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数年前、旧知のフェラーリスペシャリストからロブの元に連絡が入った。長年所有するフェラーリ330 P4(シャシーナンバー0856)を手放すので、その前に寸法を測らないか、というのだ。このことを、以前ロブの250TRレプリカを購入したアメリカの顧客に伝えると、さっそくP4のレプリカ製作を依頼された。数人がかりで各コンポーネントを分解して測定し、すべてを図面に落とし込んだ。

ドナーカーを使うレプリカもあるが、このP4では全パーツを新たに製作。例外はエンジンとギアボックスだけだ。単純に予算が足りなかったのである。そこで、フェラーリ365のV12エンジンをベースにモディファイを加え、ギアボックスは顧客が所有していた同時代のZF製5段式ユニットを流用した。出力はオリジナルを超える520bhpを誇る。それ以外はすべてオリジナルに忠実だから、見分けられるのは真のエキスパートだけだろう。ロブもその点には胸を張る(フェラーリのロゴはあえてどこにも付けていない)。



だが、コストのせいですべてを正確に再現できなかったことが少々悔やまれるようだ。ぜひもう1台製作したいとロブは話す。完璧さを追い求める飽くなき探究心。ロブのような職人こそ、陰でクラシック界を支える真の英雄だ。

写真:櫻井智成 Photography: Tomonari SAKURAI

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