最高にスーパーカーらしいスーパーカーを駆る!│紫衣の魔法を味わう 前編

Photography: Dean Smith


 
問題がないとは言わない。キャビンは狭く、ヘッドルームはほとんどないに等しい。マニアのいうところのローボディ、1980年以前の初期型カウンタックでまともなドライビングポジションにありつけるのは身長が180cm以下の人だけであって、残念ながら私自身はそうじゃない。
 
私がカウンタックのサイズに二つの種類があることを知ったのは、1999年のこと、ロンドンにある"ガレーヂ・オン・ザ・グリーン"というショップで76年式LP400を見つけたときだった。黒色の内装に黄色いボディのLP400は部分的にレストアが施されており、たったの4万ポンド(昔、この手のクラシックモデルはとっても安かったのだ!)で売り出されていた。当時はカウンタックにあまり詳しくはなかったが、整備の面倒くさそうなエンジンの程度は上々のように思えた。けれども私は試してみることもせず店を出た。私の頭がちゃんと収まり切らなかったからだ。
 
数年後にも別のLP400を試す機会があったのだが、同じ問題で諦めた。そんな過去があったので、コレクターでありブローカーとしても世界的に有名なサイモン・キッドストンが彼の初期型カウンタックを取材用に提供したいというオファーが編集部にきたとき、私はその機会に飛びついたのだ。なぜならサイモンは私より背が高く、そのカウンタックの運転席の下には彼でもドライブできるよう秘密の仕掛け(フロアが一見では分からないよう窪んでいる)があったからだった。
 
初代を試すということは、いつだって意義深い。端的に言ってそのモデルのなかでも最もピュアな存在であり、カウンタックの場合は特にそうだ。ジャンパオロ・ダラーラの後を受けて1968年にランボルギーニのチーフエンジニアに就任したパオロ・スタンツァーニと、実験部隊のチーフであったボブ・ウォレスがミウラ後継モデルの検討をし始めたころに、まずは時計を巻き戻してみようじゃないか。


 
二人はまずミウラの欠点を全て正そうとする。改善を目指すのは、高速安定性とシャシー剛性、そしてトランスミッションのフィールだ。スタンツァーニはそこで奇策を思いつく。ミウラの横置きエンジンを90゜転回し、前方にトランスミッションをボルトで固定して、フロントシートの間に配置するという、縦置きパワートレーン逆転の発想である。これにより理想的な重量配分と、よりダイレクトなミッションフィールを実現した。
 
このレイアウトの唯一の問題は、駆動をどのようにしてリアアクスルへと戻すか、だった。スタンツァーニが見出した解決策は、密閉されたドライブシャフトをギアボックスの脇からエンジンブロックを突き抜けるように伸ばし、デフへと繋げるという手法である。そう聞くと何やら複雑な仕掛けのように思うかもしれないが、決してそうではない。

編集翻訳:西川 淳 Transcreation: Jun NISHIKAWA Words: Harry Metcalfe 

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