最高にスーパーカーらしいスーパーカーを駆る!│紫衣の魔法を味わう 前編

Photography: Dean Smith


 
そしてもうひとつ、スタンツァーニには将来にむけたアイデアもあった。ドライブシャフトをもう一本、フロントに伸ばせば簡単に4WDにできる。彼はスーパースポーツの未来に4WDが必須であることを見抜いていた。事実、この画期的なレイアウトはディアブロでついに4WD化され、現代へと至っている。
 
そろそろシザードアを開け、走らせてみよう。左ハンドルのカウンタックの場合、右足をなかに入れ、幅のあるサイドシルに腰をかけてから、ステアリングホイールを握った右手を支点にして下半身を滑らせるようにキャビンへともぐり込み、最後に左足を招き入れる。それにしても青いデニムを履いてきたのは間違いだった。真っ白なレザーに跡がついてしまう。
 
収まった! 何年も拒否され続けてきたLP400のキャビンに、ついに私は座ったのだ。
 
ここでひとつだけ付け加えておきたいことがある。実をいコクピットに潜り込むうと2010年にハイボディのクワトロバルボーレを私は購入している。以来、2万5000kmほど楽しんだが、この華奢なLP400がよりパワフルだが重い私のQVと比べてどんな走りをみせるのか、そこもまた今回の知りたいところでもある。


 
小さなキーをひとつ捻って、電動式燃料ポンプの作動音に耳をそばだてた。ただ高音を放つだけのQVとは、ここからして決定的に違っている。キャブレターの準備が整った。もう一度キーを捻ってスターターを回す。

まずは8本のシリンダーに火が入り、次に10発、そして12発と連続的に目覚めていく。すでにエンジンは轟音を発しており、クラッチを切って一速に入れてはじめて、レヴカウンターは1000rpm超で落ち着きをみせた。
 
クラッチペダルはもちろん、ステアリングもアクセルペダルもすべてQVより軽い。そして、視界は驚くほど良好だ。エンジンを覆うパワードームがないため、リアの小窓もずっと大きく見える。もっとも例のペリスコープ"ペリスコピカ"はほとんど何の役にも立たない。本来は別の小さなミラーを備えて潜望鏡のように後を見るという仕掛けなのだが、どうやら机上の空論だったようだ。ミラーはよりウィンドウの近くにあって、QVの電動ミラーよりも見やすかった。

後編に続く

編集翻訳:西川 淳 Transcreation: Jun NISHIKAWA Words: Harry Metcalfe 

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