最高にスーパーカーらしいスーパーカーを駆る!│紫衣の魔法を味わう 後編

Photography: Dean Smith

この世にランボルギーニの初代カウンタックLP400"ペリスコピカ"以上にスーパーカーらしいスーパーカーなど存在しないだろう。そのことを確かめるべくハリー・メトカルフがイタリアでLP400を駆った。

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リミニのダウンタウンを抜け出して、丘陵地帯へと向かう。それにしても、車高の低さが尋常ではない。渋滞で最新のSUVに並ぶと、カウンタックのルーフはSUVのウィンドウよりも下にきてしまう。彼らからはきっと見えないだろうけれど、気づいてはいるはずだ。最新のスーパーカーのようにLP400はけたたましくない。腹の奥底に響く重低音を放っていて、それはちょうど雄ライオンの低いうなり声が、騒音計では反応しないけれども何マイルも先まで聴こえるようなものである。

 
ダッシュボードは低く、計器類は小さい。それでも速度計にはマイル表示がなくキロ表示だけであるためか文字が大きく見やすい。大好きな、縦に数字の並んだオドメーターがドライブ中に6万500kmを示した。
 
しばらく街中を走ったのち、二車線の空いた道に出た。軽くプッシュしてみる。私のQVは右ハンドルなので、構造上スロットルの操作にどうしても余計なストレスが掛かってしまうのだが、やはりというべきか、左ハンドルLP400のスロットル操作フィールは格段に優れていた。加えて素晴らしい視認性とナローなタイヤによる狭いトレッドのおかげで、すぐさま一体感を得た私はいっそう自信を深めてドライブを続けることに。



"バッケッリ・エ・ヴィッラ"(有名なレストアラー)の見事な仕事ぶりには驚くほかない。2016年にレストレーションを施したというが、それは完全にバラしたLP400を再構築するという途方もない作業だったらしい。キッドストンがこの車を手に入れたときには黄色だった。再塗装するべくフロントウィンドウを外してみたところ、中からパープル塗装が出てきたのだ。
 
さらに詳しく調べてみれば、最初のオーナーが購入した後すぐに取材したらしきスウェーデンの雑誌が見つかった。そこにはダッシュボードの上に大きな白い電話が置かれた写真があった。残念ながらその電話機はもうそこにないけれど、1970年代に車載電話を積んだカウンタックに乗っていたなんて!究極のランボルギーニ乗りだったに違いない。
 
ミッレミリアに参戦した経験のある方ならば、サンマリノへと上っていく道が、急勾配の続く曲がりに曲がりくねったトリッキーなワインディングロードであることをご存知だろう。私はこのクレイジーな道を右手に力をこめて、めいっぱい楽しんだ。大トルクに頼ってだらだらと走ることだってできるが、LP400の狂気に応えるには高回転を駆使して走らせるほうがふさわしい。
 

編集翻訳:西川 淳 Transcreation: Jun NISHIKAWA Words: Harry Metcalfe 

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