パープルのフェラーリ・デイトナを12年間所有する│走らせる意味と哲学とは?

Photography: Tim Andrew



彼は車を停めて、私にステアリングを握らせた。V12エンジンのサウンドが鳴り響き、どんどんとスピードがあがっていく。バーティは落ち着き払い助手席に座り、このデイトナのヒストリーを話してくれた。「1977年に売りにでていた時は良いコンディションだった。エンジン、トランスアクスル、ブレーキなどもすべて2人目のオーナーがリビルトしていたんだ。彼は2006年まで所有していて、ヴィオラカラーに再塗装したのもこの間だよ」

正式な整備歴などは何も残っていない。というのも、その2人目のオーナーは自分ですべて行っていたためだ。彼がすべて後に見ることができるように、ノートブックには膨大な記録が残っている。



「そのノートブックは目立たない色んなところに置いてあったんだ。特に、ボンネットの中からたくさん見つかった。なぜラベルが消えているフューズボックスを換えないのか、色んな人に聞かれるのだけれどこれはこの車のヒストリーの一つだからさ」

「昔、一度だけ前のオーナーに会って、オイルゲージを換える必要があるのではないかと聞いたことがあった。そうしたら、"なぜ?この車のすべては完璧だろう。このまま思い切って走らせないとこの車は意味をなさないよ"と言われたよ」

定期的なメンテナンスを行っているため、このデイトナはとても良く、タイトに走る。「12年間の中で、大きな整備に出したことはないんだ。ほんの細かなメンテナンスだけだよ。ほぼ50年経っていたパーツがあって、それはさすがに交換したけど、大きなトラブルも無かった。サーキットは走らずに、とにかくロングドライブをしているんだ」

そして、彼は続ける。「車は壊れるけれど、修理できるだろう。雨が降るときは、降るんだよ。どこに駐車するかなんてことをいちいち心配していたら一度もまともに走れないね。価値があがるから、という理由で車を買うことなんて何の意味もない。ボーナスが出たらその分リペアなどに使えばいい。ゴルフをする人たちは場所にお金を払っているようなものだけれど、自分でプレーを楽しんでみんな笑顔で帰ってくるだろう。車に関しても同じようなものさ」

Words: Glen Waddington 訳:オクタン日本版編集部

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