時代に対応して変化しながら革新を進めた1台

PEUGEOT CITROEN

BX の後継車として1993 年にデビューしたエグザンティアは、シトロエンとしてはまたひとつの大きな変化を示したモデルだった。エグザンティアはハイドロニューマチックを採用する中級モデルだが、中級以上のシトロエンの伝統であったファストバックスタイルをついにやめて、3 ボックス形状にしたのだ。アミ8 → GS 、SM → CX → XMと続いてきた伝統が見直された。
 
いちおうテールゲート式になっているのが、フランス車の面目躍如ともいえるが、リアには明確なノッチがデザインされていた。これはより多くの市場で売ることを視野に入れたことが背景にある。この当時シトロエンは米国にも進出していた。フランス人は戦後、実用本位の2ボックス・ハッチバックスタイルを抵抗なく受け入れてきたが、多くの国ではまだ保守的というべき3ボックスセダンが好まれていた。
 
もちろんエグザンティアは、シトロエンらしく見えるよう配慮されており、リアのノッチはごく短いものだった。また車のフォルムがアーモンドのような形状になっており、ドーム型のイメージが強いシトロエンらしさをなんとか保っていた。
 
このスタイリングは、ベルトーネのマルク・デシャンが指揮したものだった。さすがイタリアのカロッツェリアが手がけたと納得させるスマートさがあった。ベルトーネはBX以来、シトロエンが依頼してきたメゾンだが、ちなみにプジョーのほうは戦後一貫してピニンファリーナに委託しており、古典的で正統的な作風のピニンファリーナと、革新的でときにエキゾチックなこともあるベルトーネを、PSAは的確に2ブランドに采配し、両者の違いをうまく出していたといえる。
 
エグザンティアは、内装も1 本スポークのステアリングを廃止するなど、シトロエンの個性を保つより、一般的なデザインに変えたことが目立った。
 
ほかの注目点は、ハイドラクティブⅡであり、上級モデルに適用された。XMで採用されたものをより進化させて、動作の違和感を改善していた。さらに登場翌年には、アクティバと呼ばれるモデルが登場。これはハイドラクティブにSC.CARと称するアンチロール・ロール機構を組み込んだもので、ロールをしないコーナリングを実現した。シトロエンは時代に対応して変化しながら、革新を進めていた。

文:武田 隆 Words:Takashi TAKEDA

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