時代を越えて│父から息子へ受け継がれたポルシェ愛と1台の911

Porsche AG

あるバンコクの一角に広がる沈黙に、プロペラが回るような音と命みなぎるエンジンの音が突如として鳴り響いた。そこに登場したのは、アメジスト色のポルシェ 964 カレラ 4カブリオレだ。

ステアリングを握っていたのは31歳のナジャだ。平織のシャツをまくり、グレーレザーのステアリングを操り、サングラスの下には何か隠された感情があるように見える。



この964は、ナジャが運転しているが所有しているのは彼ではないという。20年前に他界した彼の父親が所有していたポルシェであったのだ。ナジャの父は熱烈なポルシェファンで、2台のターボも含め数々の911を乗り継いでいた。そして、964が最後に購入した911だったのだ。

父親の影響を受け、ナジャも若い頃からポルシェファン好きの道を歩んでいた。7歳の頃には、ポルシェのジュニアカーを父からプレゼントされ、この964によってその種が大きく開いたのであった。ナジャの家族は考えぬいた結果として、1000マイル程度しか走行距離が刻まれていなかった964を18歳になったナジャに与えることにしたそう。同時にナジャは勉強にも勤しみ、現在はビジネスマンとして成功をおさめている。

もちろん、所有しているのはポルシェばかりで、新しいモデルのカイエンターボやパナメーラ S E-ハイブリッドに、特に気に入っているという997 カレラ S、そして受け継いだ964を所有している。その中に並ぶと964は使い古されたような見た目であったため、数年前にオリジナルコンディションに戻すレストアを施した。毎日のように964をドライブさせていたため、レストアに出している間は寂しくて、頻繁に様子を見にファクトリーへ足を運んでいたそうだ。



現在は父親が購入した時と同じ姿になっており、964をドライブすると父とのつながりを強く感じるとナジャは話す。毎週、バンコクの雄大な自然の中を走り、ポルシェとの生活を楽しんでいる。彼にとってポルシェとは、生活の一環であり、過去と現在をつなぐコネクションでもあるのだ。自分にも息子ができたら、いずれは受け継いでいく予定だと言う。

3.6リッター フラットシックスエンジンが轟き、キャビンには海の心地良い風が流れ込む。ナジャは違う時代の空間にいるようだ。そしてこう言葉を発した。

"この車を運転していると、父が一緒にいるように感じるんです。どこへでも、一緒に行ってくれるんですよ"

Words: Porsche Newsroom 訳:オクタン日本版編集部

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