「車の価値は値段ではない」│あるコレクターが持つ生き方の哲学とは?

Porsche AG

世界屈指のスイスジュエリー・ウォッチブランドである、ショパールのヘッドを務めるカール-フリードリッヒ・ショイフレにとってジュエリーというのは2つの種類が存在する。1つは時間を告げるもの、もう1つは失われていくものだ。 彼は、歴史を刻んできたポルシェという宝石と共にミッレミリアだけでなく、なんとなく過ぎていく日曜の休日も楽しんでいる。

スイス カントンの小さな村にあるパン屋の外に停まっているトラクターがあった。小さく、鮮やかなレッドの1台は古風でかわいらしい。自動車社会が進んでいるジュネーヴの地では、周りと対照的な見た目でよく目立つような風貌だ。これは1958年ポルシェ・ディーゼル・ジュニアである。そして、オーナーである1人の男性が現れた。

手にはパンが入った袋を持ち、丁寧な手縫いの靴で単気筒の車に乗りこむ。彼こそが、休日を過ごすカール-フリードリッヒだ。トラクターを発進させる手順を行い、慣れた手つきで運転する。単気筒の古めかしさを魅力に感じていて、このトラクターを運転している間はどの瞬間も楽しんでいるように見える。ゆるやかな田舎道、放牧されている牛の群れ、薔薇にラベンダー、美しい自然に囲まれたこの場所こそカール-フリードリッヒの家だ。



「私を取り囲む環境では、クラフツマンシップのリバイバルが起きています。クラシックカーのようにメカニカルなタイムピースにおいては、一人が一つの同じものへずっと魅了され続けているのです。最良のケースは、自分の手でそれらを修理していけることです」

家の向かいにある彼のガレージにトラクターで入っていった。その中は、ワインレッドの1954年 356スピードスター 1600、同じくレッド(スピードスターよりは少し黄色みのある色)の1963年 356B カレラ2、シルバーの1973年 911T 2.4、イエローの1974年 911カレラ RS 2.7、シルバーグレーの1997年 911ターボ、チャコールグレーの2016年 911Rなどがずらりと並んでいる。ミュージアムさながらのコレクションだ。



「子供の頃から、車の虜なんです。特にポルシェが好きで」と彼は言う。最初に所有した車は、明るいイエローのVW ビートル・コンバーチブルであったそう。ポルシェ 911を手にする夢が叶うまではビートルに乗って過ごしていた。ポルシェという1つのゴールへ達するまで、ビートルの他には何も所有していなかったのだ。


「正しい時が来るのを待つ」ということを彼は心に決めている。それは、コレクション、ビジネス、家族、すべてにおいてだ。「何か明確で価値あるものを求めているならば、待つべきなのです」と話す。彼のコレクションに加わる車は完璧にレストアされていてはいけない。「オリジナルの状態を取り戻すまでレストアするプロセスが好きなんです」状態がひどすぎて手放したことはないのだろうか?「一度もありません。やると決めたら最後までやるのです」ボロボロであったこのスピードスターを何年もかけてレストアした彼の言葉には説得力がある。

「意地を張らずに、自分自身に正直であること。自分はどこからやってきたのか忘れずにゴールを目指すことが大事です」指をスピードスターになぞらせながら、「車の価値は値段で決められません」と言葉を続けた。そして笑顔を見せ、こう言った。「これまでに1台も車を手放したことはないですよ」

オクタン日本版編集部

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