小さなアバルトに秘められた大きなレースヒストリー

octane UK

製造3台のみの1957年フィアット・アバルト・ヴィニャーレ750スペリメンターレ。そのヒストリーと2度目のレストアについて、オーナーのデルウィン・マレットが語る。

私はこの車を30年以上前に購入した。当時の私の知識といえば、ヴィニャーレでミッレミリアに向けて準備していたと伝える1957年の『Motor Sport』誌の記事くらい。空力的に優れた水滴の形をしていることから、イタリアでは“しずく”を意味するゴッチアと呼ばれていることを間もなく知った。デザインしたのはミケロッティである。

私のゴッチアは、1960年代か70年代にシチリアから移され、マルタで発見された。数年前、マルタのエンスージアストが私に連絡をよこした。その人の兄弟が自身の整備工場で作業をしたというのだ。当時の写真も送ってくれた。この人物の協力で少し調べると、マルタに輸入した際の書類とシチリアの登録証が見つかった。さらにシチリアで調査を進めたところ、私のゴッチアが少なくとも2回、かの地でタルガフローリオに出走していたことが確認できた。どちらも完走はしていなかった。



私が購入したときには、かなりひどい状態だったので、ベアメタルの状態に戻して再塗装し、新しいフロアに交換した。あの時代のカロッツェリア製イタリア車には珍しく、エンジンカバーとボンネット以外はすべてスチール製である。最初のレストアから30年が経過し、時間と湿気による影響が現れ始めた。またレストアをする時期だ。

いずれかの時点でAピラーが折れ曲がり、フロントウィンドウが壊れたらしい。代わりに、アルファロメオ・ジュリエッタのリアウィンドウを巧みに接合してあった。ジュリエッタの窓はオリジナルより小さいため、ピラーを太くしてあったが、溶接されたパネルの下にオリジナルの窓枠が残っていた。そこで今回、それに合わせて新しいウィンドウを用意した。レストアは完成に近づいている。塗色もオリジナルの赤と黒に戻す予定だ。夏にドライブできたら最高だろう。

Words: DELWYN MALLETT 訳:木下恵

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