まるで遊園地の乗り物?ミッレミリアを3度戦った小さなレーシングカー

Photography Lyndon McNeil

1948年シアタ・フィアット750スパイダー・コルサは、こう見えてミッレミリアのために造られた立派なレーシングカーだ。1948年は完走できなかったものの、翌年は175位でフィニッシュし、1955年にも出走を果たした。

現オーナーが3年をかけてレストアしてから、走行距離はまだ数km。写真では伝わりにくいが、平均的な身長の人が巨人に見えるほど小さい。どこに止めてもすぐに人が集まってきて、口々に「カワイイ」と言う。普通なら乗り込むのもためらわれるが、スパイダー・コルサはがっしりとしており、車内も想像以上にスペースがあった。



レブカウンターの目盛りは最高7000rpm。シアタが独自のシリンダーヘッドでチューンアップした742ccのフィアット4気筒エンジンを搭載し、出力わずか40bhpとは思えないほど力強いサウンドを放つ。走りも実に軽快で生き生きとしており、安定感も抜群だ。路面の凹凸がダイレクトに響いてくるけれど、ドライビングの楽しさに比べれば、たいした問題ではない。



シアタ(Siata)は、Società Italiana Applicazioni Tecniche Automobilisticheの略で、オーダーメイドのチューニングパーツのメーカーとして、1926年にジョルジオ・アンブロジーニが設立。1936年にフィアット・トポリーニョ500Aが登場すると、その競技用チューンアップが評判を呼び、小排気量のレースやラリー、ヒルクライムで活躍した。戦後も、フィアットをベースにした独自モデルを販売する傍ら、トポリーニョ500Bの4気筒エンジンを大きく改造して、数々のレーシングカーを生み出した。

1940年代後半には、国内レースで人気の750ccクラスを席巻。このスパイダー・コルサは、まさにその時代の生き証人だ。大メーカーを相手に奮闘したシアタの波乱の歴史を、さらに色合い豊かにしている。

Words: octane UK 抄訳:木下恵

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