スティーブ・マックイーンの息子が語る父親との思い出│受け継いだものとは?

Porsche AG

1970年のル・マン24時間でのこと。“キング・オブ・クール”ことスティーブ・マックイーンは、鮮やかなスカイブルーのガルフカラーを身にまとったポルシェ917で疾走していた。

スティーブ・マックイーンは俳優でありながら、アマチュアレーサーでもあり、オートバイジャンキーでもあった。一人の俳優、そして情熱に溢れるカーエンスージアストとして映画『栄光のル・マン』の主役を演じている傍らで、父親でもあった。当時10歳であった息子 チャドウィック(チャド)はゴーカートに乗り、元気いっぱい走っていた。劇中では父が917で白熱の戦いを繰り広げ敗北していたのに対し、チャドはキッズチャレンジで妹のテリーが見守るなか勝利を獲得していた。

"テリーと私はル・マンで4ヵ月を過ごしました。基本的には撮影現場か、ゴーカートトラックにいるという生活を送っていました"と、チャドは回想した。さらには、彼らはデレック・ベルやロルフ・シュトメレンといった大物スターと朝食を共にしていたそうだ。彼が特に覚えている記憶は、父親の膝に乗り917でサーキットを一周したことだという。その影響もあってか、チャドもモータースポーツへ特別な情熱を抱いているのだ。若いころは、父と同じ俳優の道を志し一度は成功したかと思えたがそれは長く続くものではなかった。「演技の才能というのは、親子で受け継がれるものでもないようです」と話す。演技の世界を諦め、本格的にモータースポーツの世界へと進んだ。

彼には1970年からずっと抱いていた夢があった。ル・マン24時間という、モータースポーツの真骨頂ともいえよう場へドライバーとして出場することだ。しかし、その夢は2006年1月7日にフロリダのデイトナビーチで散ることとなる。最終ストレート手前のコーナーで、ポルシェ 911 GT3を操っていた彼はコントロールを失い、何度も横転するという大事故に見舞われたのだ。この時から、彼の身体には骨を支えるためのネジなどが埋め込まれている。「ポルシェによって私の人生は左右されているのです」とチャドは話した。

今は、スティーブ・マックイーンが実際に乗っていた1台でもあり、劇中でも登場したスレートグレーの911 Sを愛車としているそうだ。「このエンジン音が聞こえると、いつも外に飛び出していました」

劇中で使われた1台は2011年にオークションへ出展されたが、実際にスティーブ・マックイーンが愛車としていた1台は今でも家族が所有している。特に、チャドにとっては父親との思い出が詰まった宝箱のような存在であるのだ。

彼はグローブボックスの中から、おもむろに一枚の紙を取り出した。オリジナルの車両登録証だ。その裏を見てみると、妹テリーがまだ幼かったときに父親のために描いた、小さく真っ赤なハートが残されていた。

Words: Porsche newsroom 訳:オクタン日本版編集部

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