見た目は地味でも速く、純粋なスポーツカー以上に楽しませてくれるBMWの1台とは?

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BMW M5ほど高性能サルーンを簡潔に体現しているモデルはない。地味な見た目に反して速く、大半の純粋なスポーツカー以上に楽しませてくれる。最初のM5は1985年に登場し、M1と同じM88エンジンの別バージョンを搭載していた。それに先駆けて、BMWモータースポーツ(現BMW M)が最初に造り上げた真にスポーティーな5シリーズが、1980年のBMW M535iである。
 
1970年代末、ヨーロッパのツーリングカーレースに対する関心から、高性能サルーンに対する需要が高まった。レーシングカーの開発を担うBMWモータースポーツでも、5シリーズをベースに特別注文のホットロッドを数台造っていた。また、"M"のバッジこそ付いていないが、530や530i、さらに後期の533iは、すべてMの本拠地であるガルヒングで手を加えていた。こうした流れから、1980年にM535iの製造が始まり、E12型5シリーズの生産終了まで続くこととなった。
 
M535iは、ディンゴルフィングにある通常の5シリーズの生産ラインで部分的に造られ、その後ガルヒングでアップグレードを施された。フロントとリアのバルクヘッドを補強し、クロスレシオでドッグレッグパターンのゲトラグ製5段ギアボックスを搭載。さらに、リミテッドスリップ・ディファレンシャルと、幅の広い14インチのBBS製アロイホイールを装着した。
 
この元祖高性能5シリーズのエンジンはM仕様ではない。それを搭載するのは、E28型をベースにした1985年の初代M5からだ。M535iでは、初期の635CSiから3.5ℓ直列6気筒エンジンを流用し、これに合わせてフロントにオイルクーラーを搭載。その前を覆う高さのあるフロントバンパーに、黒のダックテールスポイラー、レカロのシート、オプションのMのストライプと、見た目の違いはその程度だった。
 
M535iは"本物"のM5ではないという純粋主義者もいるだろう。たしかに、その後のフル装備のM5と比べれば、走りもよりリラックスしたものだ。しかし、モータースポーツの血が流れているのは間違いない。シャシーはバランスに優れ、出力218bhp、トルク218lb-ftと、パワーも十分。7秒半ほどで60mphまで加速し、最高速は130mphに達する。
 
のちのM モデルでも何度か見られたが、M535iには、激しい使用でディファレンシャルがマウントから脱落するという問題があった。これは生産期間中に修正され、初期の車両はリコールで修理された。E12型M535iの製造数は1410台に留まり、うち約400台が右ハンドルである。現存数は非常に少ない。E12型は評価が低く、錆が出やすいことや、いったんバランスを崩すとオーバーステアに陥りやすいこと等が原因だ。
 
南アフリカでは、大幅に異なる独自バージョンのM535iが造られた。南アフリカのM5に関連して特に興味深いのが、レース用のホモロゲーション仕様として生まれたM530だろう。これが公式に"M" のバッジを付けた最初の5シリーズだった。BMWモータースポーツがACシュニッツァーと共同で開発し、南アフリカのロスリン工場で1976年から200台を製造。軽量なアルミパネルを使用し、バッテリーはリアに搭載。チューンアップした3.0Sのキャブレター式エンジンも鍵となり、ツーリングカーレースで成功を収めた。
 
M535iは忘れられた傑作であり、今や絶滅の危機に瀕している。レストアされたものやオリジナルコンディションのものは極めて貴重だ。一般にはその価値が広く知られていないが、Mの"通"に選ばれている名車である。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA

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