ベントレーの＂新たな世紀＂を予感させるEXP100 GT 2035年のグランドツアラー

EXP100GT の登場に先立って、まず檀上に立ったのは、2018年にベントレーのCEOに就任したエイドリアン・ホールマーク。彼のスピーチは「ここで発表するEXP 100GT は、ベントレーが100周年というタイミングで再構築するラグジュアリーとモビリティ、そして＂ベントレー自身＂を具現化したものだ」という言葉で始まった。そして、電動化や自動運転技術など一般的に想像されるもののほかに、異なる先進的な素材を独特な製法でパーツ化し、それを組み合わせることで光沢さえをもラグジュアリーの要素として使用する、これまでとは異次元の演出を可能にしたモデルであることなどをアピール。「ベントレーの未来はさまざまな新技術によって、ますます積極的に、そして独特の感動を生み出すものになるだろう」とも語った。

それではデザイン・ディレクターのステファン・ジーラフによってプレゼンテーションされたEXP100 GTが、いかに先進的で、未来のベントレーを予感させる革新的なモデルなのか。その概要を解説していこう。

ステージ上へと導かれたEXP100 GTを見て、まず誰もが驚かされたのは、その堂々としたボディサイズだった。ベントレーによれば全長は5.8m 、全幅は2.4mにも達するというから、これは2016年にダイムラーが発表したコンセプトカー、「ヴィジョン・メルセデス・マイバッハ6 」のそれにほぼ等しい大きさ。左右のドアはシザース式で、ドアの長さだけでも2m ほど。フルオープン時には地上から最上部までは3mもの高さに達する。



エクステリアデザインは、まさに未来のベントレー像を予感させる、とても魅力的なものだった。アルミニウムとカーボンをメイン素材とする力強いボディシルエットは、あるいはコンチネンタルGTの将来を示唆するものであるのかもしれない。圧巻なのはベントレーの伝統ともいえるメッシュドグリルとヘッドランプのデザインで、前者には実に600個ものLEDバルブが使用されているという。エンジンフードの最先端にはフライングBのマスコットが備えられ、そこから後方に向かってフード上を脊髄のようにパネルラインが貫く。これはRタイプ・コンチネンタルのそれからインスピレーションを得たものだろうか。ちなみにこのマスコットは、ドライバーが近づくとグリルから光を集め、その光がフード上の脊髄を経てキャビンへと流れる。まさに新たな命を授かった瞬間のような演出だ。

キャビンは銅を染み込ませたという5000年以上前のリバーウッド（倒木）や、ワインの醸造プロセスで生まれるオーガニック素材によるレザーに近い手触りの生地など、将来的にはベントレーの全車で使用可能なサスティナブルな素材が用いられた豪華な空間だ。ルーフにも新たな技術が採用されている。それはガラスルーフにプリズムを埋め込むことで、自然光と合成光の組み合わせで乗り物酔いの防止や移動中の快適性を高めるというもの。



メインコンソールには「ベントレー・パーソナルアシスタント」や「アダプタブル・バイオメトリック・シーティング」といった先進のコントロールパネルが装備されており、手動運転や自動運転のいずれかに応じたシートレイアウトや環境条件などの設定が可能となっている。シートレイアウトは2、3、4シーターのいずれかを選択できるが、ボディサイズからも想像できるように、どのアレンジを選んでも移動空間としての快適さは十分すぎるほどに素晴らしい。



AIシステムのベントレー・パーソナルアシスタントも注目の装備だ。「エンハンス」、「コクーン」、「キャプチャー」、「リ・リブ」、「カスタマイズ」の各モードを持ち、それぞれにオープントップのような開放感に満ち溢れた走りやプライバシー重視の走り、車内と車外の情報を記録する走り、過去の走りの再現、あるいはそれらを組み合わせての走りを楽しむことも可能とされている。

パワートレーンは、今回の発表ではフルエレクトリックであること、4モーター方式で最大トルクが1500Nmに達することなど、ごく簡単な内容が発表されたのみだった。EXP 100GT のウエイトは1900kg 。0→ 100km/h加速は2.5 秒以下で、また最高速は300km/hを達成するという。ちなみにこのEXP100GTに搭載されるシステムを、ベントレーは2035年までには量産化する計画だとしている。

新たな世紀を迎えたベントレー、その未来にはまだまだ世界を驚かせる大きな進化が待っているようだ。