全てのデザインは一本の線でつながっている 様式美が語るベントレー


 
2003年にベントレーがコンチネンタルGTを発表したとき、黒地に新旧2台のベントレー・コンチネンタルのサイドシルエットが描かれた画像が話題を呼んだ。突き進む流体のような前後のフェンダーラインと、眉のようなカーブを描き収束していくルーフライン。実にシンプルな線画であるにも関わらず、それが指し示す事実は誰の目にも明らかだった。21世紀のベントレーのイメージを牽引するコンチネンタルGTは、古のRタイプ・コンチネンタルの延長線上に位置する正統な後継モデルなのであると。


 
すこぶるパワフルなW12エンジンと最先端の4駆システムによる圧倒的な動力性能を核とするコンチネンタルGT。この車が秘めた世界観は直列6気筒エンジンとFRレイアウトを持った半世紀ほど前のRタイプ・コンチネンタルのそれと変わらない。いつの時代もベントレー・コンチネンタルは、豪奢でしかし滋味深い、グランドツーリングを実現するための手段に他ならないのである。
 
だが銘車中の銘車といわれるRタイプ・コンチネンタルにもデザイン上のモチーフは存在している。それが戦前のベントレーであることは言うまでもないだろう。"ヴィンテージ"として括られる戦前のベントレーは、縦長のラジエーターグリルを正面に据えた長大なボンネットと、独立した前後のフェンダーを設えたオープンホイールタイプのボディを特徴としていた。本来は泥除けに過ぎなかったフェンダー(イギリス人はウイングと表現する)が、時代とともに少しずつボディの表面に溶け込んだ結果が、Rタイプ・コンチネンタルの抑揚に富んだスタイリングとして結実しているのである。
 
戦前に端を発する歴代のベントレーのデザインには何ひとつ突飛なものはなく、ことほど左様に全ては一本の線でつながっているのである。ではこのメイクスの未来はどうか?


 
ベントレーはつい先ごろ、ブランドの創立100周年を盛大に祝い、その席で2035年のラグジュアリーモビリティーを具現化したコンセプトカー、EXP100GTを提示した。当然のようにフル電動化され、自動運転が可能になっており、AI(人工知能)が乗り手の意思を汲む。素材に関しても先進的だが、しかしサステナブルであることに重きが置かれている。跳ね上げ式のドアを持ち、白く発光しているようなEXP100GTの未来的なスタイリングはそれでもなお、現行のコンチネンタルGTの延長線上にあると一目でわかる。 

世紀を挟んだ生産車のスタイリングに一本筋が通っているように、未来のベントレーが目指す世界観も来し方と大きく変わらないだろう。それはいつの時代も、伝統を踏まえた、粋人のためのグランドツアラーに他ならないのである。
 
ベントレーとは何かという問いの答えは、コンチネンタルGTに代表される、全てのベントレーのスタイリングと様式美によって体現し続けられているのである。

文:吉田拓生 写真:ベントレー モーターズ Words:Takuo YOSHIDA Images:Bentley Motors

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