荒れ果てていたサーキットで遂に開催された本格的なイベントとは?

Photography:Tomonari SAKURAI

シャンパン、大聖堂、微笑みの天使。パリから東に200kmほどに位置するランス。このランスにはかつてサーキットがあった。1950年代から1966年までF1フランスGPはこのランスで行われていた。普段は国道31号線や県道26号、27号線の公道をレースの期間中閉鎖してサーキットとなる。シャンパンのためのブドウ畑に囲まれたその一角に突如現れる観客席とピット。

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何も知らないでこの道を通れば、誤ってサーキットに紛れ込んでしまったかと思ってしまうだろう。その建造物は本の数年前まで、荒れ果てた廃墟と化していた。1972年のオートバイレースを最後に使用されることのなくなったこのサーキット。スタンドやピットなどはそのまま放置されていた。かつて、レースの結果が表示されていた鉄塔はサビの塊となり、いつか倒壊する危険もあり取り壊しの話しも出ていた。



ドライバーズサロンにはかつてのドライバーが壁に残したいたずら書きなどもあり、フランスのレースの歴史において貴重な場所である。2000年を過ぎたあたりからここを守ろうという動きが活発化。世のヴィンテージカーブームもあり、現在では修復工事もかなり進み、当時の姿を蘇らせはじめたのだ。週末にもなるとこのピット前にはイベントでも、ましてやレースでもないのに車好きが各地から集まってくる。
 
遂に、というかようやくこのサーキットを舞台にした本格的なイベントが開催された。Premier Reims-Gueux « Légende »(最初のランス-グーの伝説)がここの修復の指揮を取るACG(le Amis du Circuit de Gueux)の主催だ。

伝説という名を付けたイベントの第一回を飾るメインイベントは1961年のフランスGPでF1パイロットとして唯一のデビューウィンを果たすという、これまたレジェンドなストーリーとなったフェラーリ156の2台がこのランスのサーキットを再び走ることだ。


 
このマシンは1961年モデル。1961年にはアメリカ人ドライバーフィル・ヒルと、このランスでデビューウィンを飾ったジャンカルロ・バゲッティが走った。ポールポジションのフィル・ヒルが乗っていたゼッケン16ともう一台は20。

さすがに昔のように8kmに渡るコースを再現できず、ピットとグランドスタンドのある県道27号を一部閉鎖した直線のみをデモ走行。1961年レギュレーション変更で1500ccとなりディーノV6を積むシャークノーズの2台がランデブー走行を始めると会場は静まり、そのV6サウンドがコースにこだまし、やがてブドウ畑に広がっていった。
 


このマシンを持ち込んだのはSetford &Companyと言う英国のレストアをメインに行っているショップだ。「今日はグッドウッドじゃないの?」と冗談で訊いてみたところ「この車をランスで走らせる方がよっぽど興味深いよ」そう答えてくれた。

次回はこのサーキットでのフランス車の伝説をお見せしよう。

写真・文:櫻井朋成 Photography&words: Tomonari SAKURAI

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