類い希な完成度と洗練度 根底に流れる変わらぬベントレーの方向性

Bentley motors



今回の訪英では新型フライングスパーのプレビューに加えてベンテイガに加わったハイパフォーマンスモデル〝ベンテイガ・スピード″にも試乗できたので、こちらも紹介しよう。 

ベンテイガ・スピードのコンセプトをひと言で説明するなら、「スタンダードなベンテイガの快適性を一切損なうことなく、ドライバーが望んだときのみよりスポーティな走りが楽しめるようになった」となる。
 
その心臓部は6リッターW12ツインターボ・エンジンだが、過給圧と燃料噴射のマッピングを見直して最高出力はプラス27psの635psを達成。大型リアスポイラーの装着によりエアロダイナミクスも改善され、最高速度は5km/h伸びて306km/h となった。これはランボルギーニ・ウルスの305km/hを凌ぐもので、ベントレーはベンテイガ・スピードを「世界最速のSUV」と称する。
 
いっぽうの足回りは、コンフォート・モードとベントレーお勧めのBモードは従来と同じ設定にするいっぽうで、スポーツ・モードのみ電子制御式サスペンションとアクティブアンチロールバーのセッティングを見直し、よりハードな走行に耐えられる足回りとした。


 
イギリス・北ウェールズのアングルシィ・サーキットで走らせたベンテイガ・スピードの印象はまさに彼らの狙いどおり。最初に試したBモードではロールが過大で不安を覚えたが、スポーツ・モードではハードコーナリング中も安定したスタンスを保ち、タイヤのグリップ限界を引き出す走りが楽しめた。そのいっぽうで感心させられたのがもともとのシャシー性能が際立って高いことで、わざと乱暴にスロットルペダルを踏み込んでアンダーステアやオーバーステアを引き出そうとしてもステアリング特性が大きく変化することなく、常に狙った走行ラインをトレースできた。しかも、スタビリティ・コントロールをオフにした状態でも破綻を示さなかったのだから、そのポテンシャルは恐ろしく高いといえるだろう。
 
新型フライングスパーとベンテイガ・スピードの2台は、ベントレーがこれまで歩んできた道のりの最先端に位置するモデルで、その完成度や洗練度は驚きに値するものの、方向性に関しては従来の延長線上にあるといっても過言ではない。
 
しかし、創業100周年を祝ったベントレーは、これから大きく様変わりしようとしている。その象徴が、CO2排出量の削減を可能にするパワートレインの電動化だ。
 
ベントレーは先ごろ発表したコンセプトモデル"EXP100GT" でフルEVの可能性を示唆。そのデビューは2035年頃と予想されるが、700kmの航続距離と0-100km加速が2.5秒を切るなど、フルEVとは思えない性能を実現している。しかも内外装のあでやかさはまさにベントレーそのもの。フルEVとなってノイズレベルがさらに低下することもベントレーにはむしろ相応しいといえる。そのほかにも自動運転技術を積極的に採り入れたり、今後登場する各モデルにはハイブリッドなどを採用してエミッション・レベルを改善するなど、技術の形態は大きく変わろうとしている。
 
しかし、そこで提供される価値はこれまでまったく変わることがない。すなわち、それは類い希なグランドツアラー性であり、ゆったりと寛げる豪華なインテリアであり、路上で圧倒的な存在感を示す美しいエクステリアである。
 
次の100年に向かって走り始めたベントレーのこれからが楽しみだ。

文:大谷達也 Words:Tatsuya OTANI 写真:ベントレー モーターズ Images:Bentley Motors

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事