異種交配された3台│イタリアンデザインとアメリカンV8エンジンの競演①

Photography: Paul Harmer

ここに並ぶデ・トマゾ、イソ、ジェンセンのGTは、いずれもイタリアでデザインされ、アメリカのV8エンジンを使う点で共通する。だが、性格はそれぞれにまったく異なっていた。マーク・ディクソンが試乗して確かめた。

ハイブリッドがもてはやされる時代だ。低燃費の内燃機関と電気モーターの組み合わせは、移行期の無難な妥協策といえる(石油王手が牛耳る時代から、どこへ向かうのかは定かではないが)。かつてジェイ・レノはコラムに面白いことを書いていた。「私は人に、『ハイブリッドに乗っているんだ』と話している。街中はガソリンで走り、高速道路では大量のガソリンで走るハイブリッドだ」
 
今回取り上げる3台もガソリンをたっぷり消費するのは確かだが、それとは別の意味での"ハイブリッド"である。イタリアンデザインとアメリカンV8の掛け合わせ、つまり"異種交配"という意味だ。こうした形態は1950年代から盛んになり、60年代末から70年代初頭に大きく花開いた。登場順に並べると、イソ・グリフォ、ジェンセン・インターセプター、そしてデ・トマゾ・パンテーラである。


 
ヨーロッパ製パッケージに大排気量のアメリカ製エンジンを詰め込むことは、英国のレイルトンなどが第二次世界大戦前から行っていた。1950年代になると、クライスラーなどのアメリカメーカーがイタリアのデザイナーを採用して、モーターショーで華麗なコンセプトカーを発表した。続いて少量生産のデュアル・ギアやハドソン・イタリアといった2ドアの高級セダンが登場。だが、イタリアとアメリカのハイブリッドが真の飛躍を遂げたのは1960年代だ。アストンマーティンやマセラティに匹敵する華やかさやパフォーマンスに加え、"ヤンク・タンク"の信頼性を兼ね備えた美しいクーペが誕生した。
 
取り上げる3台もそのバリエーションである。イギリス人にとって最も馴染み深いのがジェンセン・インターセプターだ。1966~76年の11年間に6408台と、長期間に比較的多く生産された。当初はヴィニャーレが製造を請け負ったが、デザインはカロッツェリア・トゥーリングで、動力はクライスラーのV8エンジンである。一方、パンテーラはもっとアメリカ色が強い。カロッツェリア・ギアのアメリカ人デザイナー、トム・ジャーダが手掛け、フォードエンジンを搭載。数年間はフォードのリンカーン・マーキュリー系列のディーラーで販売された。インターセプター同様、パンテーラも商業的に成功を収め、製造数は7200台、1971年からなんと1992年まで生産が続いた。
 
混じり気のないイタリアらしい華やかさで別格の存在なのがイソ・グリフォだ。ベルトーネ時代のジョルジェット・ジウジアーロによって、フェラーリのエレガンスとランボルギーニの非日常性が組み合わされており、パワーソースはシボレー・コルベットである。製造数は1963~74年にわずか400台強で、3台の中では飛び抜けて希少だ。はたして走りも別格だろうか。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Mark Dixon Photography: Paul Harmer

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