「王女たちのラリー」は 明るく、お茶目で、過酷で、華やか。

Photography: Tomonari SAKURAI, Shiro HORIE



記念すべき第20回「ラリー・デ・プランセス・リシャール・ミル」の開始は午前8時30分。思いのほか、静かな日曜のパリの朝である。参加者はゼッケン順にヴァンドーム広場を出て、パリの南西に向かう。 ヴェルサイユ宮殿の前までは、まるで観光旅行の風情であった。
 
女性のクラシックカーラリーを普通にイメージすれば、優雅にハンドルを握り、おとなしく緩やかにアクセルを踏むといったところだろう。だが、スタートしてパリから一旦郊外に出ると、その想像はすぐに間違いだと気付かされる。フランスにおける一般道の制限速度は80㎞/h。学校付近や市街地では30km/h、50km/hと細かく速度規制がしっかりと施されるものの、それ以外はタイトコーナーが続く崖っぷちの細道だろうが、アップダウンの激しい農道だろうが、ほぼ車の性能を思い切り発揮させながら激しく攻めていく。ルートに信号はほぼ無く、ランナバウト(フランスではボンポワン)という円周型の交差点ばかり。つまり、ランチタイム以外はほとんど、ノンストップでぶっ飛ばし続けることになるのだ。

シェブルーズバレー自然公園で、参加車両は最初のレギュラリティゾーン(タイムアタック)に挑む。主催者は「ウォームアップ」と説明をしていたが、慣れたドライバーはブラックマークを残すほどの勢いでスタートを切っていく。カントリーランチはエキュリーズ・デラレインヴィルで。オルレアンから目と鼻の先にあるこの19世紀の農家は、180人の参加者に穏やかで緑豊かな天国を提供してくれる。午後はロワールエシェールに入り、オルレアンとヴァンドモアを越えて森と野原を走り回りゴールとなる。



初日の夜はややおとなしいビュッフェだった。深夜に作業音がするので駐車場まで見に行くと、ちぎれたジャガーEタイプSr.3のマフラーを叩いて溶接している。轍の深い農道ではセンターマフラーが不利なのだろう。ドライバーの真剣な眼差しが印象的だった。

文:堀江史朗(オクタン日本版編集部) 写真:櫻井朋成、堀江史朗 Words: Shiro HORIE (Octane Japan) Photography: Tomonari SAKURAI, Shiro HORIE

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