兵庫の倉庫に眠っていたアストンマーティンV8│いよいよ27年の眠りから覚め、陽を浴びる

Euro-port

兵庫県明石市。その山あいにある閑静な住宅地のガレージにアストンマーティンV8が長く眠っていた。その期間、なんと27年間!1988年に新車として日本で登録された車で、販売元は東京にあった麻布自動車。オーナーの奥様は当時の模様をよく覚えていらっしゃり、「ほかにもランボルギーニとかも乗ってきて熱心に営業されていました。そこまでしていただくと何か買わなくてはということで、その中でも少し落ち着いたアストンマーティンを主人は選びました」とのこと。長く放置されていたことは前回も書いた通り。そして今回はついにレストアに着手することが決まり、まずはガレージから外に出すことになったのだ。



この車を買い受けた次のオーナーはT氏。彼は30年もの時を経た、結果的にワンオーナーの車を所有することになる。これは実に稀なことである。放置されていたとはいえ、ずっと同じガレージでの保管されていたのだから。錆や腐りはほとんどなく、本革シートの白緑の薄いカビだけが過ぎた年月を物語る。

ある意味、大事にされたと言える珍しい車なので、どうせなら徹底的にオリジナルにこだわってフルレストアを施してみようということになったのだ。まず大ごとなのは、どうやってガレージから出すか、である。ガレージ前の道路はやや傾斜しており、トランスポーターは置きにくい。そもそもエンジンが掛からないので、自走で動かすことも不可能。搬出から機関系の整備については、関東のアストンマーティン正規ディーラーに協力してもらうことに決め、搬出もお願いすることにした。用意したのはローラーの付いた移動用具である。タイヤにエアを入れ直し、馬を履かせ少しずつ外に引き出す。徐々に車のアングルを整えシャッターの方向に向かせていく。


 
暑い時期である。汗がしたたり落ちる。オーナーの奥様からは、さっぱりとした手作りの梅のジュースの差し入れをいただいた。約2時間を掛けてトランスポーターへの積載が完了。この後は一路横浜を目指すことになる。
 
たぶんガソリンタンクの内部のダメージは相当だろう。キャブレター関連はもちろん、すべてのチューブや配線はチェックしなければならない。レストアは気の遠くなるような仕事であるが、完成した時の喜びは何事にも代えがたいもの。


 
静かにトランスポーターは動き出した。あと数か月、いや数年を経てこの車は完全に再生する。そこまでオクタンでは取材を続けていく。

アストンマーティンV8
1940年代後半、裕福な実業家デイヴィッド・ブラウンがアストンマーティン・ラゴンダ社のオーナーになり、2-Litre Sports(DB1)、DB2、DB4、5、6といったスポーツカーを世に送り出す。やがてデイヴィッド・ブラウンが会社を売却。車名からDBの名が外され、次に登場したのがこのアストンマーティンV8だ。このモデルは1990年まで生産が続き、生産台数は4021台だった。ハイパワーバージョンのV8ヴァンテージもある。

アストンマーティンV8(1972-1990)
エンジン 5340cc V8 
最高出力 280bhp/5500rpm
最大トルク 301 lbt-ft(約41.6kgm)/3500rpm
0-60mph加速 6.2秒
最高速度 149mph(約240km/h)

オクタン日本版編集部

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