異種交配された3台│イタリアンデザインとアメリカンV8エンジンの競演③

Photography: Paul Harmer

こんなことをいうと性差別だとお叱りを受けるかもしれないが、グリフォは間違いなく"真の男"のために造られた1960年代スタイルの車だ。それは、アレハンドロ・デ・トマゾのパンテーラにも当てはまる。ただしこちらは、グリフォを買う経済的余裕のない男性をターゲットとしていた。デ・トマゾはフォードと手を組み、そのマーケティング網を大いに活用。また、カロッツェリア・ヴィニャーレ本体とそのモダンな工場を買収し、販売に見合う生産スピードを確保した。

パンテーラは1971~72年の最初の2年間に3000台を売り上げた。アメリカでの販売価格をミウラやマセラティ・ボーラの3分の1にしたことも功を奏した。 デザイン的には、インターセプターやグリフォとは明らかに世代が異なる。別の惑星からやってきたように見えるほどだ。ギアのトム・ジャーダが自由に腕を振るった結果、SFドラマの『スペース1999』に登場してもおかしくないスタイルに仕上がった。とはいえ、先行モデルのマングスタほど型破りではない。ジウジアーロがデザインしたマングスタは、左右に開くガルウィング状のエンジンカバーを備えていた。



ジャーダ自身、パンテーラに関して与えられた指示は、「マングスタの新バージョンで、より快適で安いもの」だったと回想している。「(デ・トマゾが)シャシーをくれた。ダラーラの設計だから見事だったよ。そこから"車を取り出す"のが私の仕事だった」
 
パンテーラの特徴のひとつは、タイヤのサイズが前後で大きく異なることだ(マングスタも同様)。GTSのオリジナルは15 インチのホイールに、フロントは225/50、リアは285/50のタイヤを履いていた。試乗した1台はフロント16インチ、リア17インチのレプリカスタイルだ。これはパンテーラではお馴染みである。かつてはオリジナルサイズのタイヤが入手困難だったからだが、それだけでなく、パンテーラのオーナーはずっと以前から、自分の好みに合わせて積極的にモディファイを施してきた。
 
この1973年パンテーラを所有するジョニー・ウッズも例外ではない。とはいえ、比較的控えめの変更だ。たとえば、よく似合っているメタリック・バーガンディーのペイントも、実は"キャンディー・ブランデー"というカスタムカラーである。ジョニーはこの車を自分の手でレストアした。毎日レストアに時間を費やせるよう、あえて合板工場でのシフト勤務を選び、作業を進めながら腕を上げていった。スチール製ボディの大部分を自分で仕上げただけでなく、レザーシートの張り替えも独学で習得。レブカウンターに至るまで、文字通りあらゆるパーツをジョニー自身がリビルドした。


 
当然ながら、改良できると思った箇所には手を加えた。フォードの351cu-in(5.8ℓ)"クリーブランド"V8も、控えめなアップグレードで350bhpに高めてある。「あと200bhpあってもいいくらいだ」とジョニーは話す。また、ウィルウッド社のアフターマーケットパーツでブレーキを拡大した。「はっきりいってオリジナルは危険」だったからだ。

キャスター角を増やすため、フロントのアッパーウィッシュボーンをモディファイして、高速走行時の安定性を高めた。このモディファイは大きな評判を呼び、アメリカではパンテーラのオーナーが彼の元にパーツを送ってくるようになった。
 
こうしたモディファイによって、パンテーラの個性がより際立っている。そうでなくても元々インターセプターやグリフォとは異色だった。単にミドシップというだけではない。乗り込んでみると、はるかにコンパクトな印象で、ステアリングがペダルに対してセンターに寄っている。面白いことに、外で聞くとV8エンジンがイメージ通りの轟音を上げるのに、車内で聞くと比較的静かだ。試乗した他の2台には及ばないが、煩わしく感じるほどうるさいわけでもない。


 
ギアボックスはZF製5段式マニュアル(GT40やBMWM1と同じものだという)で、逆向きに搭載してグラウンドクリアランスを確保している。シフトレバーは長めで、ドッグレッグパターンのゲートは、いかにもイタリアンなクローム製だ。グリフォの太く短いシフトに比べると、細くて華奢にすら感じる。実際、長年の間に金属製のシフトゲートと接しているため、摩耗して折れることも知られている。
 
シフトも折れるだろうと思うほど、パンテーラの走りは病みつきになる。グリフォ以上にハードに攻めることを要求してくるのだ。ダイレクトなステアリングと硬めのサスペンション、コンパクトなサイズが相まって、カートで走っているかのような迫力がある。しかも速い。このパンテーラで本気で走れば、現代の多くのパフォーマンスカーとも張り合えそうだ。ただしドライの路面に限る。リアエンドが軽く、タイヤの接地面が広いから、ウェットの路面ではナーバスな性格が顔を出すだろう。
 
アレハンドロ・デ・トマゾは、スポーツカーやレーシングカーで名を成してからGTに進出した。対してジェンセン・インターセプターは、ラグジュアリーなスポーツツアラーを祖先に持つ。一方、イソ・グリフォのルーツはスクーターやバブルカーだ。3台ともまったく異なる血筋を持ち、まったく異なるGTとなった。したがって、どれがベストかを考えたところで意味はない。
 
そうはいっても、ジェンセン・インターセプターが格上の2台に対して善戦したことは特筆に値する。今でも最も安く手に入るが、使い勝手では他を凌ぎ、金額以上の華やかさもある(ほめているのは編集長が所有しているからではない。念のため)。一方、私が個人的にほしいのは、やはりグリフォだ。ただし、50万ポンド近い資金があればの話である。

悲しいかな、それがグリフォのオーナーになるために背負わなければならない十字架なのだ。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Mark Dixon 

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