ベントレー コンチネンタルSCの知られざる魅力を堪能するヨーロッパ横断

Photography: Martyn Goddard


 
1998年の車とはいえ、もっと時代を遡るような雰囲気が漂うのも事実だ。大柄なボディなのに狭い室内、人間工学に基づかない、もしくは1950年代のセダンのようなインターフェイスには失笑を禁じえない。方向指示器は大げさにいえば、オン・オフの作動までに数十cmも動くじゃないかと思ってしまう。それでも、コンチネンタルSCは長距離移動の相棒としては快適そのものだ。潤沢にあしらわれたウッドパネル、本革シート、ムートンカーペット⋯、あとは暖炉さえあれば上質なリビングルームが完成する。
 
そんな冗談はさておき、コレクターである友人は正しかった。コンチネンタルSCを気に入らない人なんていないかもしれない。とにかく落ち着くのだ。紳士のゆとりを感じさせてくれる。


 
雨も止み、ほっこりしながらリヨンに向けて高速道路を走っていた。すっかり高級車に毒されてしまったのか、のんびりキャンピングカーの後ろについても気にならなくなっていた。コンチネンタルSC の左側をランボルギーニ、AMG、マクラーレンの集団が追い越していった。ほっこりしていたはずの筆者にスイッチが入った。"あの集団についていけるんだろうか?"との疑問がわき、アクセルペダルをグッと踏み込んだ。時間にして4秒ほどだろうか。慌ててアクセルオフしたのは、マクラーレンのリアに突っ込みそうな勢いだったからだ。スピードは本誌では明かせないほどに達していた。

巨漢かつ老体とはいえ、コンチネンタルSCはパンチが効いている。400psオーバーは伊達ではない。特徴的なのは、アクセルペダルを踏み込みエンジンの回転数が上がっても高い静粛性が保たれていることだ。あまりに静かに力強く加速する様は、まるでワープしているかのような感覚に陥る。
 
コンチネンタルSCにも慣れてきた頃、ようやく飛ばす楽しみを知ってしまった。何度味わっても、気持ちよいのだ。燃料計の針がグングン下降していくのはやむを得ない。もともと大富豪のための車だったのだ。フランスの温泉保養地、エクス・レ・バンの街とブルェ湖を横目にかつてジャン・ベーラ、ハリー・シェル、ロバート・マンツォンなどが駆け抜けた同じ道を辿る。コンチネンタルSCは単なる高級車ではないことが明白になってきた。
 
強大なパワーゆえにリアを滑らせたい衝動に駆られるも、なんとか自制心をもってグリップ走行に徹した。だが、コンチネンタルSCは攻めれば、攻めるほど"応える"車だ。どうしてもニヤケ顔で運転してしまう。ジェントルマンの姿をしていながら、いかようにも走れるのがコンチネンタルSCなのである。

編集翻訳:古賀貴司(自動車王国)  Transcreation: Takashi KOGA (carkingdom) Words: Dale Drinnon 

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