ドイツのポルシェミュージアムで開催されている特別展示へ訪問取材

Photography:Tomonari SAKURAI

ポルシェ917と914の50周年の特別展示の行われているドイツのポルシェミュージアムを訪れた。夏前の事なので現在では914の特別展示は終了してしまっているが、917展は好評につき延長され、12月8日までの展示となった。2019年は、このポルシェミュージアム10周年の節目でもある。もともと、1976年にポルシェ工場と道を挟んだ反対側に設立されたものが拡大し、新博物館としてオープンしたのが2009年のことであった。


 
チケットを手にしてエスカレーターで展示スペースへ。そこで最初にゲストを迎えるのは、1898年にフェルデナンド・ポルシェが設計したポルシェとしての第一号車であるPorsche P1である。馬車から馬を取ったようなこの当時の典型的な車の形をしているが動力は電気。電気だと無段変速となりギアボックスが入らないことを利点と考えたのであろう。この後にVK4501 (P)が展示されていれば良いのだが、これはさすがに見られない。
 
このミュージアムの展示コンセプトは、ポルシェのフィロソフィーを見せるためにいくつかに分けられている。始まりである”プロローグ”。ここでPorsche P1で始まりAustro-Daimler SaschaやVW Typ 60などの展示に続く。そして”軽さ”。917の未塗装のボディが展示されている。内側からライトを当ててグラスファイバーで作られたボディを見せており、いかに軽量にしてパワーウェイトレシオを稼いでいるのかということを表している。


そのガラス越しに覗いてみると、そこで整備を進められていた909ベルク スパイダーを発見。この後のグッドウッドでの走行に向けての整備のようだ。本来は入れないガ レージだが今回無理をお願いして撮影させていただいた。

その次は”知的”。ここではポルシェが最速を目指すのではなく再興を目指すのであるということ。すでに1960年代には356B 2000GS カレラ GTに搭載されたロッキング・シンクロメッシュ・ギアボックスを展示。”速さ”では空力を。ポルシェ956を逆さに展示し、時速321.4km/hで逆さにした956は離陸が出来るという表現の仕方がされている。”力強く”では917のパワーユニットを、”情熱的”ではポルシェによって勝ち得た3万を超える勝利を称えるトロフィーの展示でポルシェのレースへの情熱が、また市販車にもフィードバックされているということ。”一貫性”では911のスタイルを継承しているということ。こうして、すべて見終わる頃にはポルシェのフィロソフィーを堪能出来る展示となっているのである。
 
特別展示となる917の50周年ではル・マン24時間で初めての勝利をもたらし、耐久のポルシェの歴史の始まりである917を称える意味のある展示だ。その展示のサブタイトルが”Colours of Speed”。レストアが完了したばかりの記念すべき917-001、ポルシェが初めてル・マンで勝利を勝ち取った917-023、幻の16気筒 917A/16スパイダーなど本家の博物館ならではの貴重な917が拝める。ピンク・ピッグまでが展示され空力の変貌も見て取れる。そして今回の展示で発表された917 LivingLegendへと続く。


917の歴史を一気に見られる特別展示は12月まで延長。この機会を逃すな !


特別展示の撮りを飾ったのが917Living Legendだ。

この917の展示が終わり市販車、レース用マシンなども現代へと続き展示されていく。そして917を一望出来る場所に914はどちらかというとひっそりと展示されていた。螺旋階段のように徐々に展示を見て回ると最上階にいつの間にかたどり着いているという感じで、その最上階には919 ハイブリッドEVOが展示されており、締めくくりとなる。

ミュージアムでの展示はドイツ語と英語だが、より深く展示を見て回ろうとするときに役立つのがオーディオガイドだ。このガイドには日本語も設定されており、安心して堪能出来る。タブレットというか、スマホに近いものがガイドになっており、音声だけでなく、映像も収録されている車両もあり、多くの情報を実車を見ながら見て歩けるのである。


 
ちょっと博物館からは離れるがもし、ドイツを車の博物館めぐりで旅行する機会があればもう一ヵ所足を運んでも良い場所を紹介しよう。BMW博物館のあるミュンヘン。このBMW博物館に寄ったら、ドイツ博物館の別館にあたるシュライスハイム航空館にも足を伸ばす。ここにはポルシェの水平対向六気筒エンジンを搭載したセスナ機が展示されているからだ。スイスのフラミンゴという機体に車に搭載されているエンジンと同じものが使用されたセスナが展示されているのだ。1979年に造られたこのセスナは結局この1機のみしか生産されなかったという貴重なモノでもある。

観光のアドバイスをもう一つ。シュトゥットガルトは大都市で、ヨーロッパのあるいはドイツらしい風景を楽しむのは難しい。もし、ヨーロッパの風景を望むのであれば、シュトゥットガルトの隣にあるエスリンゲンという街を訪れることをおすすめする。ここは中世の面影を残す古都でドイツらしさを感じることが出来る場所だ。

写真:櫻井智成 Photography: Tomonari SAKURAI

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